まほろばblog

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「人間に屑はない」

水曜日, 2月 29th, 2012

      
 東井 義雄 (教育者)

   『致知』1990年8月号
    特集「花は香り、人は人柄」より

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「人間に屑はない」を願い続けて教員生活五十五年、
そのうち十二年余りを小学校、中学校の校長を
務めさせていただきました。
私は大変幸せ者だったと思っております。

現役時代はよく、
「あなたの学校は素晴らしいですね」といわれました。
何のことかと尋ねると、例えば

「いつ電話しても心温まる受け答えをしてくださる。
 学校全体の温かい和やかな明るい雰囲気が
 伝わってくる感じなのです」

といってくださる。

私は特別、電話の応対について職員の皆さんに注意したり、
お願いしたこともありませんでしたが、
そうした職員一人ひとりのおかげで、
立派に務めさせていただくことができたわけで、
こんな幸せなことはないと思います。

五十五年にわたった教員生活の中で、
ずうっと願い続けてきたことは、

「人間に屑はない」

ということです。

どんなに名を知られていないような草花でも
花を咲かせるように、どんな子供たちにも、
一人ひとりが咲かせなければならない花があります。

ところが、今は何か子供の学習の点数というものに、
親も学校の先生も頭を縛られてしまって、
点数の低い子供はつまらない子供だと
考えてしまう傾向が強くなりました。

しかし、能力には高い、低いがありましても、
点数は低くても、その子供しか持っていない
光というものがあるのです。

ですから私はいつも、

「どの子も子供は星。
 みんなそれぞれが、それぞれの光をいただいて
 まばたきしている。
 僕の光を見てくださいとまばたきしてる。
 
 私の光も見てくださいとまばたきしている。
 光を見てやろう、
 まばたきに応えてやろう。
 
 光を見てもらえないと、子供の星は光を消す。
 まばたきをやめる。
 光を見てやろう。
 
 そして、
 
 やんちゃな子供からは、やんちゃな子供の光、

 おとなしい子供からはおとなしい子供の光、

 気の早い子供からは気の早い子供の光、

 ゆっくり屋さんからはゆっくり屋さんの光、

 男の子からは男の子の光、

 女の子からは女の子の光、

 天いっぱいに子供の星を輝かせよう」
 
 
そんなふうに言い続けてきたのです。