まほろばblog

Archive for 4月, 2013

帯津先生講演会「いのちに寄り添うがん治療」

月曜日, 4月 1st, 2013

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「ありがとう」の反対語

月曜日, 4月 1st, 2013
  大山 真弘(おおやま・しんこう=蓮華院誕生寺内観研修所所長)
           『致知』2013年4月号
                      致知随想より

└─────────────────────────────────┘

 してもらったこと。

 お返しをしたこと。

 迷惑をかけたこと。


この三つの問いかけを通じて人生を振り返り、
自分を深く見つめていくのが「内観」です。

日本で発祥したこの心理療法に私が出合ったのは、
いまから二十五年前のことでした。

かつて私は商社やメーカーに勤め、
社長賞をいただくほど熱心に仕事に励んでいました。
海外勤務の機会にも恵まれ、
充実したビジネス人生を送っていました。

母が重い病で入院したのは、
私がブラジルに出発する直前でした。
余計な心配をかけまいと、
父も母も私に本当の病名を伏せていました。

「しっかり仕事をするんだよ」

病院のベッドで送り出してくれた母の微笑みと手の温もりは、
いまも忘れられません。

危篤の報を受けたのはそれから一年後でした。
赴任先からようやく駆けつけた時、
母は既に息を引き取っていました。

大切な親の死に目にも会えないこの仕事にどんな意味があるのか。
父はなぜ本当のことを告げてくれなかったのか。
自分はこのままでいいのだろうか……。

激しい葛藤から私を解放してくれたのが内観でした。

幼い頃まで遡り、母にしてもらったことや、
迷惑をかけた記憶を思い起こすと涙が止めどなく溢れ、
ほとんどなんのお返しもできていなかったことに愕然としました。

同時に、父が息子の活躍を願ってあえて母の病名を隠した親心、
私を育てるためにかけた数々の苦労に思い至り、
わだかまりは氷解しました。

私は学生の頃から「人の役に立つ人間になりたい」と
いう思いを抱いていました。

内観の素晴らしさを実感した私は、会社を辞めて出家し、
内観指導の道を歩むことを決意したのです。

現在、指導を行っている熊本の蓮華院誕生寺には、
健常者ばかりでなく、摂食障害や鬱病、
アルコール依存症等々、様々な問題を抱えた方々も
お越しになります。

一週間も内観を続けると、それまで他者を非難し、
被害者意識に陥っていた方が、問題の原因が
実は自分にあることに思い至ります。

正しいと思い込んでいた自分が、
これまでいかに人に迷惑をかけてきたか、
にもかかわらず、いかに支えられて生きてきたかを悟り、
感謝の念を抱くことで、楽に、
明るく生きられるようになるのです。

夫婦や子供の問題に悩み、相手を変えたいと思っている方は、
まず自分が内観することで問題が大きく改善することに驚かれます。

こうした指導体験をもとに、私はこの程
『お母さんにしてもらったことは何ですか?』を
上梓しましたが、内観ではまず、
母親についての記憶を辿りながら、
冒頭の三つの問いかけをしていきます。

母親は自分を産んでくれた大切な人であり、
あらゆる手間をかけて自分を育ててくれた
最も身近で尊い存在だからです。

母親のいない人でも、それに代わる方はいるはずです。

一人静かに記憶を辿るうちに、不思議なもので、
心の奥にしまい込まれていた遠い日の思い出が
一つ、二つと甦ってきます。

母親との関係が良好ではない人も、
それまで思い至らなかった母親の心情を悟り、
憎しみが感謝の念に変わっていきます。

ある男性は、重度の認知症になった母親の介護に
葛藤を抱えていました。
意思の疎通もできなくなった親を
介護することにどんな意味があるのかと。

最初は内観にあまり乗り気ではありませんでしたが、
あるイメージが浮かんだことをきっかけに、
一気に内観が深まりました。

そのイメージとは、俵形の真っ黒なおにぎりでした。

「谷亮子選手との出会い」

月曜日, 4月 1st, 2013
 稲田 明(帝京豊郷台柔道館館長)
        『致知』2013年4月号
              特集「渾身満力」より

└─────────────────────────────────┘

私は福岡県警にいた二十七歳の時、
東福岡柔道教室を始めたんですが、
十年が経って全国少年大会にも出られるようになった
昭和五十八年に、彼女(谷亮子選手)は
お母さんに手を引かれて道場へ来ました。

当時七歳でしたが、まだ五つくらいかなと思うくらい
体が小さくて、柔道は全然やったことがないと。

三つ上のお兄ちゃんがいましたから
その見学に連れてこられたのだと思いますが、
柔道着を着せてみると、その着こなしが実にうまいんですね。

試しに受け身を教えてみたら非常にもの分かりがよく、
この子、何かあるかもな、と思いながら最初は見ていました。

私は子供が成長していく上で、
指導よりもアドバイスが大事だと思うんですが、
最初に言ったのは

「おまえは体が人一倍小さいのだから、
 三倍の努力をしなさい」


ということでした。

二つ目は

「柔道に限らず、一度やろうと決めたら
 最後までとことんやり通しなさい」


と。すると本人も聴く耳を持っているというか、
そういう器があったんでしょうね。のみ込みが早いんですよ。

学校へ行く前の朝練でも皆より一時間も前に道場に来て、
掃除をしたり、ゴムチューブを引いたりして
練習が始まるのを待っている。まだ小学校の二年生ですよ。

練習中も絶対に手を抜かないし、
小学生の部が終わった後も一人居残り練習をし、
高校生と同じように、夜十時半までトレーニングをして帰る。
それくらいの努力を小さな頃からしていました。

それでも、小学校の時はまだ体が小さくてもやれたんですが、
中学生になると体が小さ過ぎて団体戦には使えません。

そうすると、いままで一時間早く出てきていたのが
だんだん遅くなり、どうしたのかなと思って本人に尋ねました。
すると「ピアノと習字を習っている」と言ったもんだから、

「おまえ何を考えてるんや!
 ピアノや習字には五輪はないんやぞ。
 どれか一つにしろ。

 でないと三つとも全部ダメになってしまう」

と言いました。
その日はもうポロポロ涙を流して帰りましたが、
明くる日にはケロッとした顔で一番に来て
「柔道を頑張ります」と言ってくれました。