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「問題発見のために最も重要なこと」

水曜日, 10月 16th, 2013

 上田 正仁(東京大学大学院理学系研究科教授)

『致知』2013年10月号
連載「生涯現役」より
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私の体験に限らず、「問題を見つける」訓練は
創造的な見方を鍛える上でとても重要です。

問題を見つけるために最も重要なのは
「何が分からないかが分からない」状態を
「何が分からないかが明確になる」レベルに高めることです。

そうすれば、問題のありかが絞り込まれてくるはずです。

その第一歩としてまず自分のテーマに関して
徹底的に調査をしなくてはいけません。

インターネットで検索すれば、
たちまち関連情報が入手できるでしょう。

その資料を丹念に読み込むわけですが、
その時、その分野ですでに分かっていること、
実践されていることを学習しようという意識でいると、
いいアイデアは生まれません。

むしろ「何が分かっていないか」を理解したいと
強く意識しながら読むように心掛けるべきです。

そうするとやがて
「分かっていること」と「分かっていないこと」の
色分けがはっきりとしてきます。

商品開発の例でいうと、アイデアが漠然とした状態で
最初に取り組むのは徹底した市場調査や同業他社の研究です。

成功、失敗のケース、その原因を含めて過去の情報まで
遡って調査する中で、取り組むべき課題を明確にします。

その際重要なのは成功例の真似をしてはいけない、
という点です。

過去の例に学ぶのではなく、常に差別化を意識しながら
資料を読み込まなくてはいけません。

根気のいる作業ですが、そうすることで
他社がまだ手を付けていない空白の部分が見えてきます。

その中で「何をやらないか」をまずはっきりさせ、
残ったアイデアの中で、必死に頑張れば
なんとか達成できるという自分の可能性を
ぎりぎりまで引き出せそうな難易度の高い課題に
的を絞り込んで勝負をかけるのです。

才能のある人は、ともすれば比較的余裕を持って
やれることに取り組もうとしますが、
私に言わせれば、それはあまりにもったいない話です。

人生は一度きり。

自分の可能性を極限まで
引き出せる高い目標に向かって
挑戦してこそ生きがいも生まれるというものです。

ここで情報処理の極意というべきことをお伝えしましょう。