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2010年11月04日

●「売れるもの、求められるもの」

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29日(金)に、ホテルロイトン札幌で北海道農政部主催の
「北の農産品☆見本市」が開かれ、小泉武夫先生の記念講演会があった。
題して「『売れるもの、求められるもの』の意味」。
食品開発の基本原則を述べられたもので、大変参考になった。

『小泉流五原則』と呼ばれるもので、さらに三項目を付け加えられた。
先ず、最大前提が「うまいもの」であることは、論を待たない。

@ 新規性を要す
A 理論武装を要す
B 受け皿を要す
C 物語性を要す
D 心の和らぎを要す

これらの原則に沿った話がある。

● 北海道では、海産物加工で酢は欠かせない。
   年間90億円で、99%は知多半島と神戸港から出荷されている。
   何故、北海道で酢を醸造しないのか。
   これは上記の条件を充たし、チャンスでもある。
   事実、先生が提唱してから、北海道で醸造酢の製造気運が盛り上りつつある。

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● 世界五大蒸留酒のウイスキー、ジン、ウオッカ、ラム、ブランデーの内、
   ジャマイカ生まれで、イギリス育ちのラム酒がある。
   それと同じ発想に、日本の泡盛があったのだ。

● 農大醸造科の学生はいわば小泉チルドレン。沖縄に限って言えば、
   有名蔵46軒もあり、そこの泡盛を集めて、福島山中7合目にタンクを設えて
   熟成させた。そこは丁度旭川位の緯度になり、琉球生まれの
   阿武隈育ちで、最初福島から「泡盛ブーム」に火が付き、それが
   燎原の炎のように全国に瞬く間に飛び火して行った。

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● 1958年に発刊された「世界の酒」の坂口謹一郎氏は「ワインの滓(おり)を知らずして、
   ワインを語るなかれ」と言われた。「日本発酵機構余呉研究所」所長をしていた頃、
   滋賀県永源寺にある「バーナードリーチ美術館」の館長でもあり、ワイナリーの
   オーナー図師礼三氏から相談された。
   そのワインの余りのまずさにどうするべきかと。
   先生がそのタンクを覗き込むと、半分以上は滓が溜まっていた。
   それを見るなり、先の坂口先生の言葉が閃き、これを滓入りの「にごりワイン」で
   売り出すことを提案、日経の「食あれば楽あり」に書くと、注文が殺到して、
   巨大なタンク群が全て売れ切れてしまった。
   濁る物はコロイド物質と言って味蕾を刺激すること、日本の「味噌汁」の如し。
   これは逆転の発想の最たるもので、本来ワインでは負とされていたおりを、
   逆手にとって、これに陽の目を合わせた。

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さらに「小泉流五原則」に加えるに、
E 履修現象を発現するもの
● これはカルチャーショックを与えるもの、記憶脳を活用させるものだ。
   これには先天性履歴現象と後天的履歴現象がある。
   先天性は、DNAから好嫌が異なる。例えば臭いチーズや納豆の匂い。
   日本人の赤ちゃんは「お食い初めの儀」で、納豆は食べるが後は吐くそうだ。

● 後天的な物の代表が、吟醸酒の香りである。戦後油の消費量が4.7倍になった事は、
   世界で初めての激変でもあった。
それに伴い、酒も辛口に変化し、大吟醸酒の香りが脚光を浴びるようになった。
中国には「油断大敵」とあるように、何でも油料理で、
    それを消すに白酒が飲まれる習慣があるように。

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● 大脳の奥の嗅脳部には鼻孔によって吸った特有の匂いが、
各病氣に効くセンサーがあり、これが後天的履歴として現象する。
つまり、匂いこそ旨い物と決定付けるポイントだった。
   そして、酵母によって発酵するしないが、これを決定付ける要因にもなっている。
   そのよい例が、小泉先生が指導した福島の「女将漬け弁当」や
加賀の「8番ラーメン」、帯広の「ぶた丼」などがある。

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そして、健康志向の
F 食べて健康感を訴えるもの

伊達の廃鶏にカツオ節のかびを付け、「鶏のダシ」を作るなどの
G 意外性のあるもの

以上。

これら8項目に代表される原則に当てはまっていれば、ヒット商品間違いなし!!
と言う所。皆様も、これに適う商品を編み出してみては如何ですか。

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(高橋北海道知事と小泉武夫先生)

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