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2011年04月15日

●小出裕章氏へ岩上氏のインタビュー 4.10

気鋭のジャーナリスト岩上安身氏のオフィシャルサイトから、
京都大学原子炉研究所の小出裕章助教授へのインタビューに
答えての映像をご覧下さい。
まほろばの店内で流している25日のものより、
さらに立ち入った内容と時間をかけたお話しに、
突き動かされるものがあります。

お話しの最後に、この内容を拡散し行動して
広く知らしめることを伝えていらっしゃるので、
この場を通して、小出氏のメッセージを載せさせて頂きます。
また、下には1日における、小出氏と岩上氏との対談を掲載します。

2011年4月1日のインタビュー
京大原子炉実験所の小出裕章助教に、
原発事故の危険性についてインタビューしました。
サポーター有志から提供された文字起こしも掲載しています。

岩上: 率直にお聞きしたい、小出先生は1968年に、ダイレクトにこちら(京都大学)にお入りになった?

小出: 68年に東北大学工学部原子核工学科に入学した。

岩上: 原子力を研究し利用を研究する立場でありながら原子力はやめたほうがいいと発言している理由は?結論として原子力は無理だと確信するに至った経緯は?

小出: 原子力発電をどうしてもやりたいということで東北大学に入って原子力の勉強を始めた。当時、宮城県では女川町という牡鹿半島の付け根にある町に原子力発電所をつくろうとしていた。私は、原子力発電所は素晴らしいものだと思っていたし、宮城県で一番電気を使うのは仙台市なのだから仙台市に原子力発電所を作ればいいと思っていた。なのに女川町とはどうしてかと疑問を持ち、その答えを捜し歩いた。安全であれば仙台につくればいいのに、80キロも離れた女川に作ったのは、今となっては当たり前のことだが、原子力発電所は都会には引き受けられない危険をかかえているから。だから都会には決して原子力発電所は建てないで、いわゆる過疎地というところを選んで建てて、長い送電線を引いて電気を都会に送るものだということに気がついた。ということがあきらかになって、そうであれば、私の結論としては認められないということになった。都会で必要な電気をその危険も含めて都会が引き受けるというのならいいと思う。しかし、都会は危険を引き受けるのは嫌だから、電気だけもらって、危険は過疎地に押し付けるというようなことは私の生きる原則からして到底認められない、というようなことがあって、原子力発電を廃絶させようと思うようになった。

岩上: 何年頃のこと?

小出: 1970年。秋のこと。

岩上: 70年というと、日本に原子力発電所が……

小出: 3機しかなかった。私が大学に入ったときには1機しかなかった。1966年に東海の1号炉が動き始めて、さあこれから原子力だという時代だった。私もてっきりそう思って原子核工学科に行った。その後70年に敦賀、美浜ができた。そのころ私は原子力の夢に燃え、そしてそれが間違いだと気がついて180度自分の生き方を転換した。

岩上: その後も研究を続けてこられた。

小出: その後大学院まで東北大学にいて、74年からここ(京都大学)にきて37年になる。今はここで仕事をしている。

岩上: ということは、ここ(京大)で安全な原子力をつくろうとされたのか、むしろ原子力がいかに危険かという研究を中心になさったのか。

小出: 後者の方。原子力がどのような危険を内包しているかということを明らかにする研究を続けてきた。

岩上: それはこの世界ではめずらしいということになるのかと。

小出: それには原子炉実験所という(私の)職場について話したほうがいいと思う。原子炉実験所というと、原子力発電を推進するための研究所と思うかも知れないがまったく違う。大学は基礎学問をやるところで、物理学、化学、医学、生物学など、それぞれの学問分野に中性子という素粒子を使いたい学問分野がある。そういう学問分野にいる研究者が集まってどうすれば中性子が使えるかと考えた。それで原子炉を作ってしまえば中性子が出てくるので、原子炉のまわりで仕事をしようということで原子炉実験所を作った。つまり、ここの原子炉は目的ではなく、道具として作られた。この実験所には200人いてそのうち80人が教員。その人達は物理学、化学、医学や生物学が専門で原子力のことは殆ど何も知らない人もいるが、私のように原子力に興味を持っている者もいる。私は廃絶したいが、いまだに原子力の旗をふっている教員もいる。もともと原子力を推進するのが目的の場所ではないなので、私のような廃絶論者が咎められるということはない。学問的にウソを言わなければ、ここにいることに問題はない。

岩上: 圧力がかかるということはないのか。

小出: 京都大学なので、かつての文部省、いまの文部科学省の傘下で、金もそこからもらっている。実験所という組織としては国に楯突くのはよくないと思っている人もいるだろうし、私をじゃまだと思っている人はいるだろうが、直接的な圧力はない。

岩上: 基礎的な研究が本来の目的。

小出: 物理的な目的、化学的な研究をする人もいる。

岩上: 湯川さんや友永さんのような…

小出: 湯川さん、友永さんは理論物理学の人なので我々のような実験物理に近い分野とは違うが、基礎学問をやるという意味では通底している。

岩上: どうして原子力発電というシステムはだめなのか。ダメな理由は効率性の問題、事故が起こったら取り返しが付かないなど、いろいろな角度があるだろうが、ひとつづず噛み砕いてお願いしたい。

小出: 一番の基礎は、原子力発電はウランを燃やすということ。ウランを燃やしたら核分裂生成物ができる。放射性物質、いわゆる死の灰を産まずには発電することは出来ないという機械が原子力発電所。ウランを核分裂させればかならず核分裂生成物ができる。それは避けようがない。

岩上: ヨウ素、セシウム、プルトニウムというようなものも含まれる?

小出: プルトニウムは核分裂生成物ではないが、放射化生成物と呼んでいる一連の放射性核種のうちの一つだが、原子力発電をやっている限り、何百種類の放射性核種を生み出さざるをえないというそういう技術。そのうえで問題は、生み出す放射能がとてつもなく膨大だということ。広島の原爆が炸裂したときに燃えたウランは800グラム。この手に乗るくらいの重さのウランで広島の町が無くなってしまった。100万キロワットの原子力発電所が一日動くと、これを3キロ燃やす。つまり広島原爆の3倍から4倍のウランを毎日燃やしている。つまり3キログラムの死の灰を毎日生み出しながら動くという装置が原子力発電所。1年も動けば広島原爆の1000発分を自分の身体の中に溜め込むという機械。死の灰を原子炉の中にどんどんためこんでいく。これが万一にでも環境に出てくるようなことになればとてつもないことになるということは、もうみんな知っていた。だからこそ原子力発電所は都会に建てないということにしてきた。

岩上: 今原子力発電所は全国で54基ある。54基あって、それがみんな同じサイズで100万キロワット……

小出: 大きいのも小さいのもあるが、基本的に言えば100万キロワットに近い。

岩上: それが1000発分かける54、5万4千発……。

小出: 正確に言うと4万8千発分程度だが、一言で言えば5万発と思えばいい。毎年毎年広島が生み出した核生成物の5万発分を生み出すのが原子力発電所。すでに1966年に東海1号炉が動き始めて45年、それがどの程度の核生成物を産んできたかと言えば、広島原爆の120万発分。

岩上: 原子力発電所を続ける限り……

小出: 毎年5万発分ぐらい増えていくわけ。

岩上: 今回の福島原子力発電所では使用済み核核燃料棒がある。使用済みなのになぜ熱を帯び、冷却し続けなければならないのか。これが福島第一原子力発電所に4500本以上ある、ガラス固化体という方法があってどこかにしまっておくこともできると聞いている。安全に処理することもできると聞いている。ほんとうに安全な技術があるのか。死の灰と使用済み核燃料棒の解説をお願いしたい。

小出: 100万キロワットとは何かというと、電気になっているのが100万キロワットという意味。炉心では300万キロワット分の熱が出ている。残りの3分の2はどうするかというと、海に捨てている。そんなばかばかしい非効率な装置。しかも200年前にジェームスワットが発明した蒸気機関の原理をいまだに使っている。効率はあがっているが熱効率はいまだに33%しかない。残りの66%は捨てるしかないという馬鹿な装置。ここでは、一秒間に70トンの海水を引きこんで、その温度を7度上げるということをやっている。荒川や多摩川で一秒間に30トン、40トンぐらい。淀川で、1秒に150トン。日本全国でも一秒間に70トン以上流れる川は30もない。日本屈指の大河が原子力発電所ひとつつくると現れて、その温度が7度も上がっている。7度というと、お湯の温度をそれだけ上げて風呂に入れるかというと、そんなことができないくらいの温度。とてつもない温度上昇。海にはもちろん生き物もいるが、その生き物たちは生きられなくなる。代わりに温かい環境が好きな生き物が来るからいいじゃないかと言う方もいるかもしれないが、少なくとも、そこの生態系は破壊されてしまう。日本近海は世界平均の海洋の温度上昇の何倍も高いスピードで温度が上昇している。

岩上: 原子力発電所の設置、それによる温排水と日本近海海洋温度上昇の実証的な関係の研究はあるのか。

小出: 厳密には立証されていない。ただし、日本にある54機の原子力発電所が1年間にどれだけの温排水を出しているかというと1千億トンになる。日本という国にはたくさんの川があるが、全河川でどれだけの流量があるかというと4千億トン。つまり、日本全体の川の四分の一にもなる水量を「熱い川」として海に流している。私の感覚で言えば、それで海が熱くならないのはおかしい。

岩上:地球温暖化の原因は二酸化炭素だとしきりに言われているがどうか。

小出:その主張がかなり有力だが、私は信じていない。二酸化炭素は確かに原因の一つではあるが、それだけでなく原発の温排水も一因だと思う。

岩上:CO2の排出規制のためには原子力だと、この何年間、かなり喧伝されてきたが間違いなのか。

小出:もともとから間違い。原子力発電所が生む核分裂生成物の始末まで考えれば、あまりにもばかばかしい。原子力発電をすればCO2の排出量が減るなどということは決してない。

岩上:今回、あらためて日本は津波に襲われやすい国なのだと実感した人は多いと思う。そんな国で海のそばに原発を建てるのは必須なのか。チェルノブイリは内陸だったが。

小出:チェルノブイリの場合は、そばに巨大な人造湖を作って、そこから水を引き込んで原子炉を冷やしていた。内陸にある原子力発電所は、大きな川のそばにある。川の水を使って冷却をするが、ただ川ではとうてい間に合わないので、冷却塔という空気中に放熱する巨大な装置が付随している。日本の場合は海洋国なので巨大な川はまずないし、巨大な人造湖を作るのも国土上難しい。といって、冷却炉をつくるには金がかかりすぎる。そのため、ともかく海沿いにつくるのが一番いいということで、ずっと海沿いに作ってきた。

岩上:原子力を推進していくうえで、海洋国で島国であるということは立地上、有利だと考えていた人たちも多いのか。

小出:海岸線が長いから原子力発電をやりやすいと思っていた人は多いと思う。

岩上:蒸気にしてタービンをまわすために必要な水と、冷却のために取り込む水はまた別の経路。それぞれ何トンずつ必要なのか。

小出:今問題になっている福島の原子力発電所は、沸騰水型という名前の原子炉。東京電力など主に東日本の電力会社が使っているのはこのタイプ。この原子炉では、原子炉の中を冷やす水というのがまずある。私たちが一次系と呼んでいる水。原子炉の中でウランが核分裂した熱を受けて、蒸気になる。その蒸気の一部の力で発電をして、残った蒸気をもう一度水に戻さなければいけないわけだが、そのために海水を引き込んで余った蒸気を水に戻している。海水のほうは二次系と呼んでいる。一次系と二次系という二つの水があるわけだ。二次系のほうは一秒間に70トンの海水を7度温度を上げながら、ぐるぐるぐるぐるまわすということをやっている。一次系のほうは全体でいうと数百トンの水だと思うが、原子炉を冷やしているため放射能で汚れている。外に捨てられることができない。だから密閉した状態でグルグル回している。新たに注ぎ込むとか、ごくごく一部外に漏れてしまうということはあるけれど、基本的にグルグル内部で回しているのが一次系。

岩上:今回、2号機などで外に出ているのは?

小出:一次系の水。本来閉じ込めていなければならない水だ。

岩上:ということは格納容器もしくはどこかに穴が開いているということ?

小出:今回の事故報道では、原子炉という言葉が大変混乱して使われていると思う。原子炉というのは、まずは炉心というウランの燃料が入っている部分がある。それが原子炉圧力容器という鋼鉄の容器の中に入っている。厚さが15センチぐらいある巨大な圧力釜である。それをさらに原子炉格納容器で覆っている。炉心と原子炉圧力容器と原子炉格納容器の三つが入れ子のようになっている。しかし、今メディアは、あるときには炉心を原子炉と呼んで、あるときには原子炉圧力容器を原子炉と呼び、またあるときは格納容器を原子炉と呼んでいる。

今の福島の状況はどうなっているかと言うと、いわゆる炉心の部分はすでに破損している、一部溶融している状態。

岩上:どうしてわかるか。

小出:ウランが核分裂すると核分裂生成物という放射能が生まれてしまう。放射能というのはあらゆる意味で危険なので、とにかく閉じ込めなければならない。そのためにどういう構造になっているか。ウラン自身は瀬戸物に焼き固めている。直径1センチ、高さ1センチという小指の先ぐらいの小さな瀬戸物に成形するわけだ。その中でウランが燃えて核分裂生成物ができる。それが外に漏れては困るので、その瀬戸物は燃料棒被覆管という直径1センチ長さ4メートルの金属のサヤに詰めてある。言うなれば細くて長い物干し竿のようなもの。サヤ自体はジルコニウムという金属でできていて、その中に、ウランを焼き固めた瀬戸物が400個ぐらい詰めてある構造になっている。その燃料棒被覆菅は、ウランが燃えてできる核分裂生成物を閉じ込める機能を持っている。

ただ、ジルコニウムという金属は温度が上がって900度を超えると水と激しく反応し、水素が発生する。その反応は発熱反応なので、一度反応が始まってしまうと、どんどん温度があがり、どんどん反応が加速する。大変危険である。

今回の福島の事故の場合は、初めに冷却に失敗した。そのため炉心の中の温度が上がってしまい、燃料被覆管が水と反応してたくさんの水素が出てきた。それが外に漏れた。意図的に漏らした部分もあるが……。その水素が、格納容器の外側にある原子炉建屋という建物の中に充満して爆発した。ご存知のように一号機と三号機という原子炉は、建物がぼろぼろに吹き飛んでしまっているという状態になった。それはつまり、燃料棒被覆管のジルコニウムが反応してボロボロになってしまったということ。燃料棒被覆管は放射能を閉じ込める機能を持っているが、それが壊れてしまったから中から放射能がどんどん漏れてきた。そして、水素爆発で建屋が吹き飛ばんだときに、放射能が外にまき散らされた。東京などにも放射能が届いたのはそのせいである。

岩上:意図的に漏らしたというのは、いわゆるベント、中の圧が高まったので下げるために弁を開く作業をしたということ?

小出:そうだ。原子炉格納容器はなんのためにあるかというと、放射能を閉じ込める最後の防壁。しかし、今回の事故がそうであったように、原子炉の中が熱くなってしまって蒸気がどんどん噴き出してくると、その蒸気の行き場がない。格納容器の底にサプレッションチェンバーというもの(圧力抑制室と言っている報道もあるが)の中に蒸気を導く仕組みになっている。サプレッションチェンバーには、もともとは水が満たしてある。その水の中に蒸気を噴き込むので、蒸気が水に戻るという設計。しかし今回は、蒸気が次から次へと出てきてチェンバーの中に吹き込まれたので、その中にもともとあった水が100度を超えて、すべて蒸気になってしまった。蒸気を水に戻すことができないので、格納容器の中の圧がどんどん高まっていった。

もともと格納容器は設計耐圧が4気圧。しかし今回は、最大で8気圧まで高まってしまった。そうなると格納容器そのものが壊れてしまう。壊れてしまったら、もう手の付けようがなくなる。ということで、ある時期に決断をして、格納容器の中に充満している蒸気――水素も放射能も含まれている蒸気を意図的にベントというバルブを開いて外に出そうとした。その操作の途中で、水素と放射能が原子炉建屋の中に漏れていって、水素が爆発して放射能が外に出た、そういう事故経過だ。

岩上:水素が発生しているのが明らかになった時点で、燃料棒が破損しているということは明らかだった?

小出:もちろんす。私たちのような専門家なら全ての人間が、燃料棒の被覆管が破損しているということはわかる。

岩上:被覆管が破損しているという状態は何を意味する? どれほどの危険性が今後あるのか。

小出:福島の事故で起きたように、被覆管の中に閉じ込められていた放射能が環境に出てきてしまうということに直結したわけだ。ただし被覆管の中には、ウランを瀬戸物に焼き固めたペレットというものが詰まっている。被覆管が壊れると、まずそのペレットの中にたまっていた核分裂生成物のうち揮発性の高いもの、つまり空気に出やすい放射能が出てくる。それがヨウ素とかセシウムとかテルルとか私たちが呼んでいるもの。そういう揮発性の高い放射性核種が外に出てきた。それが東京にも届いてるし、周辺を汚染している主体である。

そういう放射能が出てきたということは私自分も測定していたので、被覆管が壊れていることは確実だと思っていた。しかし、中に詰まっているウランの瀬戸物――燃料ペレットについてはまだ溶けていないのではないかと実は思っていた。

岩上:先生が測定したのは15日?

小出:一番初めに測定したのは15日。東京で空気を集めるサンプリングをして、どんな放射能があるかを計った。結果が出たのは17日。私が気がついたときには、すでに東京の空気は汚れてしまっている状態だった。それ以降、いろんなものを計っているが、今のところはヨウ素とかテルルといった放射性核種が主体だ。ところが一週間ほど前に、福島の発電所の敷地の中でプルトニウムという放射性物質が見つかったという報道があった。

岩井:東電によれば、21日、22日に採集した結果が今頃になって出たと。それまでは、測定器はないとか、プルトニウムの検出はしていないと言っていたのだが、つい先日深夜の会見で、紛糾の末、副社長が明らかにした。

小出:プルトニウムのことを話し出すと非常に時間がかかるので、今はできない。ただプルトニウムという放射性核種は、水に溶けないし、揮発もあまりしないもの。重たいものである。燃料棒の被覆管が壊れたぐらいでは、環境に漏れてくることはないはずだと私は思う。しかし、そのプルトニウムが出ている。それは何を示しているかというと、ウランの瀬戸物がすでに溶けているということを示している。

岩上:被覆管が壊れていることと、その中にあるウランの瀬戸物が壊れていることでは重大な違いがあるのか。

小出:大きな違いがある。ウランの瀬戸物のほうは2800度にならないと溶けない。被覆管のほうは900度を超えたら破損が進行していくわけだが、それどころではなく、原子炉の中は2800度を超えて瀬戸物が溶けるという状態になってしまっていることがわかったわけだ。

岩上:先生が見渡す限り、メディアでそういう指摘はされているか。

小出:私は取材を受ければ、そう言うし、これまで何度も言っている。専門家であれば皆知っていることでもある。ただ、メディアでそれをどう報道しているかは知らない。

岩上:これは大変なことだ。2800度を超えているということは冷却できていないということか。

小出:もちろんそうだ。冷却ができていないから被覆管も壊れた。原子炉というのは常に冷却していなければ壊れてしまうもの。冷却できない状態になって、今日の規模に至っているわけだ。

岩上: 本来は冷却水を循環させるものだが、今、停電の影響で、もしかしたらポンプそのものの機械的な破損があるのかもしれないが、とにかく稼働していない。電源のつなぎこみ工事ができた、照明がついたなどと言っているが、実際には何も稼働はしておらず、放水だけが行われている。そして、放水によって冷却が進んで水温が安定していると、いつも発表されている。最近はメディアも追求慣れしてしまっているところがある。しかし、プールの温度はだいぶ安定したという発表とプルトニウムが検出されたことによってわかる原子炉内部の温度の高さというのは全く一致していない。なぜなのか。

小出:今は、福島で進行していることが一緒くたに報道されている。進行している危機は、実は二つある。まず、1号機、2号機、3号機という原子炉そのもので危機が進行している。もう一つの危機は、使用済み燃料プールで進行している危機。この二つの危機はまったく別のもの。それをちゃんと分けて考えないといけないと私は思う。

100万キロワットの原子力発電所では300万キロワット分の熱が出ていると先ほどお話しした。300万キロワットの熱の全てが、ウランが燃えて出ているわけではない。300万キロワットのうちの7%、21万キロワット分は、実はウランの核分裂ではなく、原子炉の中にたまった核分裂生成物、いわゆる放射性物質が自分で出している熱である。放射性物質というのは放射線を出す能力を持った物質であり、放射線というのはエネルギーの塊。熱を出し続けるのが放射性物質なのである。つまり放射性物質がある限り、そこでどんどんどんどん熱が出てくる。原子炉で何か事故が起きたとき、制御棒を原子炉の中に入れると、300万キロワットから21を引いた279万キロワット分の熱は止めることができる。ところが21万キロ分の熱は止められない。

岩上:279万分というのはウランの核分裂で出てくる熱?

小出:そうだ。それは制御棒を入れて止めることができる。今回もたぶんそれは止められたのだと思う。しかし、21万キロワット分は、そこにある放射性物質そのものが出しているわけだから、どんなことをやっても止められない。

たとえば皆さんが車に乗っているとする。どこか一個の車輪が脱落すれば、ブレーキを踏むだろう。そうして車を止めることができる。50キロで走っていた車でも0キロになる。しかし、原子炉はそうはいかない。ブレーキを踏んでみて93%の熱は止めることができるけれど、7%は止められない。車で言えば、タイヤの一つがなくなったまま走り続けなければならないようなことになる。その21万キロワット分の熱をどこかに捨てることができなければ、原子炉は溶けてしまう。

今回の福島の場合には、通常の電源がまず失われた。送電線がみんなひっくり返ってしまって外部から電気が来なくなった。自分自身も、原子炉が止まってしまって発電できない。そうするとどうするか。彼ら(東電)は、非常用のディーゼル発電機を動かして、電気を送ればいいと思っていた。それでポンプが回るからいいんだという考え方だった。しかし非常用発電機がすべて津波でやられてしまった。自分では発電できない、外部の電源も使えない、非常用の発電機も使えないということで、一切の電源を断たれてしまったわけだ。それを私たちはブラックアウトと呼んでいる。日本語では発電所の全所停電という。そうなるとポンプは動かない。原子炉を冷やせない。しかし、原子炉の中には放射性物質そのものが出す熱(崩壊熱と私たちは呼んでる)が出続けるので、原子炉は壊れてしまうということになる。

岩上:この崩壊熱が原子炉を壊してしまうと、本体の最もコアな部分にある、ずっと堆積されてきた原子炉内部の放射能が環境中に放出される、と。それは途方もないこと?

小出:そうだ。(PART1終わり)

岩上:崩壊熱によって放射能も出ているわけだが、プルトニウムが出たという意味は? 東電の記者会見で、なぜプルトニウムという重大な危険性のある物質の検査を真剣にやらなかったか聞いたところ、「揮発性のある物質を先にやるんだ。アルファー線やベータ線やガンマー線といったものの中で調べやすいものから測定するんだ。プルトニウムはのちのち出てくるものだからゆっくりやった」という理由を言っていた。また、プルトニウムの検査は敷地内の三ヵ所でしか測定していない。なぜ広く調べないのか、環境中に広く放散されている可能性はないのかと聞くと、「プルトニウムは重金属で重いので周囲に飛び散ることはないので敷地内だけで充分だ。環境への影響はありません。人体への影響はありません」と言う。

先生にはとてもじゃないけど頷けない説明だろうと思うが、先生の立場からコメントしてほしい。

小出: プルトニウムも含めて放射性物質はあらゆる意味で人体、だけでなく生命体に危険。だから環境に影響ないとか、危険がないとかいうことは一切誤り。プルトニウムが環境に検出されたということは、その危険があるということ。ただし、先日検出されたプルトニウムの汚染度合いは、非常に少ない。今現在、そのほかの放射性物質の量があまりにも膨大なので、比較の問題としてプルトニウムが出たとしてもその危険度は大したものではない。だからプルトニウムが出たからと言って、その危険度は大したものではありません。比較の問題です。プルトニウムが出て大変だ、危険だ危険だというのは誤りです。ただプルトニウムが出たということは、原子炉内のウランのペレットが溶けたということなので、その意味ではものすごく重要な事実です。

岩上: このあとどういうシナリオが想像できるか。

小出: 私が一番心配しているのは、原子炉の炉心が溶け落ちるということ。炉心の燃料ペレットが溶けたと言ったが、それはまだごく一部だと思っている。ただ、大量に溶けると、塊になって落下していく。つまり私たちはメルトダウンと言っている。それが起きると最悪の場合水蒸気爆発が起こる。もし水蒸気爆発が起きれば圧力釜が破壊される。すると比較的ぺらぺらの格納容器も壊れる。そうすると、放射能を閉じ込めるすべての防壁がそのときに失われる。今だって大変な放射能が出ているが、それにくらべてもケタ違いの放射能が出る。それを私は破局的な状態と呼ぶ。そういう破局的な事態になんとしても行かせたくないし、いってほしくないと思う。

岩上: 東電あるいは保安院は小出先生のような理解をしているだろうか。

小出: もちろんしている。これを理解できなければ専門家とは呼ばない。政府関係者はともかく、東電の中の技術者は当然理解をしている。

岩上: それを積極的に説明するかどうかは別として……

小出: それはそうだ。でも東電も溶けているということは認めている。ただしこれを大変なことだとは言わない。

岩上: 損傷ということがすなわち溶けているということか。

小出: 損傷と溶けるのとは違う。私も、最初は燃料棒の被覆管が損傷していると言っていた。それを超えて、ウランの燃料ペレットが溶けていると。炉心が損傷しているというときにはペレットのことを呼ぶこともあるが、溶けているということが大変重要なこと。

(マスコミ関係者から電話で中断)

岩上: 2800度を超えるものをどうやって冷やせるのか。水をかけることで冷やせるのか。私がずっと質問し続けているのは、ポンプというものが通電したら動くという確証はないということ。あれほど複雑なシステムを修理するのに人を近づけることもできない。外部からモーターを持ってくるしかないのではないかと聞くと、内部モーターを調達しているというあいまいな答えが返ってくる。先生はこの冷やすということに関してどうお考えか。

小出: どういうことをやってきたかというと、地震と津波によって全ての電源が断たれてしまった。でも原子炉は冷やさなければこわれることが分かっているので、東京電力は電源車を持ってきてポンプ車から原子炉に水をいれることにした。しかし電源車を接続する施設が水没していて使えなかった。そこで消防のポンプ車を持ってきた。水がないので海水を使った。海水を一度入れたらこの原子炉は二度と使えないということを意味するが原子炉を冷やさなければならないのでとにかく使った。しかしそれがいつまでも続けられる訳ではないので、電源を復帰するしか無いと思った。電源さえあればポンプは動くだろうと思った。ところが電源が復帰してもポンプは動かなかった。ポンプが水没していたからだ。作業員が行ってみたら、ポンプ周辺の水は膨大な放射能で汚染されていて近づくことさえ出来ないことが分かった。この汚染水をなんとか外に出さないことにはポンプの回復すら出来ないという状態。しかし、私はそれはもうダメだと思う。新しいポンプを持ってきても何をしても、どんなことをやってもダメだと私は思っている。なぜかというと原子炉圧力容器と呼んでいる高圧の圧力釜がすでに破損している。さっきまでは炉心のことを言っていたが今は鋼鉄の圧力釜、つまり圧力容器が破損してしまっている。

岩上: 圧力容器が破損しているという根拠は?

小出: ポンプ車で水をどんどん入れているが、水を大量に入れれば圧力釜の水位が上がるはずなのに、いくら水をいれても水位が上がらない。東電の発表でも、燃料棒が130cm、270cmと常に露出している。どうして露出しているか、それは圧力容器に穴が開いているからだ。それを東京電力は「圧力容器の下部に穴が開いたイメージ」と表現したが、いずれにしても圧力容器に穴が開いている。そうすると、いくらポンプが動いても正常な回路には戻らない。

岩上: 今はポンプは動いていない。

小出: 動いていない、そして私は動かして欲しいと思っていた。しかし、ポンプが稼動してももはや冷却システムは使えない。

岩上: 新聞ではもう無理だとは書いてない。

小出: 私もなんとかポンプを動かして冷却システムを稼動させなければと思っていた。しかし、もうだめなんだとわかった。

岩上: いつごろわかった?

小出: きのうかおとといのこと。これはもうダメなんだと。どうにもならないと気がついた。

岩上: 絶望的な話。他に解釈のしようがない?

小出: 他に解釈の仕様はない。そうなると正常な冷却ができないのだから外部から海水でも何でもいいから送って冷やすというその手段しか無い。それをやってしまうと、外部から水を入れるわけだから、どこからか出さなければならない。しかし、水が外に出る仕組みはすでにできている。格納容器が破損しているから、どんどん出ている。原子炉を冷やす水が放射能まみれになって格納容器から漏れて放射能まみれになってどんどん表に出ている。それがタービン建家にたまり、トレンチに溜まっている。しかしこれをこれからもずっとやり続けなければならない。

岩上: 高濃度の放射能が海に放出されたということは全世界を汚染している。環境と外がオープンにつながったシステムになってしまっている。……なんと言ったらいいか。

小出: 私もことばを失う。

岩上: これからどうなる

小出: 今の状態が続くのであれば、これまで約3週間続いてきたものを今後何ヶ月という単位で続けるわけだがその期間中放射能が出て行くということになる。

岩上: 原子炉は止まっているが核生成物はある。こういう状態でどのぐらいの放射性物質が産出されて外に出ることになるのか。

小出: まだ全体の数%だが、これから長引けば数十%、最悪100%出ることもある。水蒸気爆発が起きれば数十%という単位で一気に出て行くことになる。

岩上: 水を外からいれて冷やしているということは、結局、原子炉を洗い流しているのと同じこと。原子炉も格納容器も、洗い流し続けたら、流れ出る放射性物質の総量はどのくらいになる。

小出: これまでは原子炉にあったもののうち、セシウム、ヨウ素といった揮発性のものが数%、期間が長くなれば、数十%、百%に近づいていくだろう。プルトニウムのような放射性核種があるわけだが、燃料ペレットの溶融がまだ大規模でないようなので、これから冷やし続けることができるならばそういった放射性核種が表に出てくることはないと思う。まだ出ているのは本当にわずか。

岩上: プルトニウムがどこから出たのか特定できないというのが東電の説明だが、

小出: そのとおり、特定できない。

岩上: プルサーマルをやっている3号機から出たとは言えないか。

小出: 言えない。

岩上: どこかしらに、ペレットが溶けたという可能性があるということ? まだ僅かであると言ってもプルトニウムがどこから出てきたかは……

小出: そんなことはわからない。つきとめることも出来ないだろう。だが、ペレットが溶けたということは確実。もっと溶ければ水蒸気爆発をともなう破局に至る。それを防がなければならないと思っている。水蒸気爆発が起きないとしても、ものすごく長期にわたって原子炉を冷やさなければならない。正常な冷却回路は復帰できないので、外から水を入れて、原子炉を冷やし、それが外に出ていくということを覚悟しながらやらなければならない。しかし、それをやりとげることができれば、揮発性でない、プルトニウムを含む放射性物質を原子炉の中に閉じ込めることはできる。だから水を入れなければならない。

岩上: 何年間ぐらい?

小出: わからない。何ヶ月、1年2年の単位でやることになる。

岩上: 1,2年で落ち着くことはできる?

小出: 崩壊熱という話をしたが、そこにある放射性物質そのものが熱をだしている。寿命の長い物短い物、何百種類の放射性核種がある。寿命の長いのも短いのもある。原子炉を泊めても7%分の発熱は止められないと言ったが、それは原子炉を止めたとのときのこと、その中には寿命の短いのもあるので、1日経てば10分の1程度になる。あと1週間も経てばそのまた10分の一、それ以降はほとんど減らないが、1年、2年経てば、またその10分の1というような量に減る。熱が次第に減っていくのである程度減っていくと、燃料ペレット(瀬戸物)がどろどろに溶けるということはないだろう。そこまでは、とにかく冷やし続けなければならない。原子炉の形状にもよるが、もし、かたまってしまっていると冷やすことも出来ない。そうなるともっと長い時間がかかる。私にはいつまでとは言えない。

岩上: われわれは外界に放射能が出て行くこの状態を甘受しなければいけない?

小出: もうしわけないが、それを防ぐ手立てはない。

岩上: たとえば、防護を強化した人員や、ロボットを使って、格納容器の穴をふさぐということはできないか。

小出: 今はできないと思う。被爆の量がものすごいことになっていると思う。格納容器に近づくことは何ヶ月という単位でできない。

岩上: ロボットは?

小出: ロボットは想定外の状況によわい。たぶんロボットは何の役にも立たない。
岩上: 揮発性の放射性物質の影響は?

小出: 1986年のチェルノブイリでは、原子炉が爆発してしまったので、プルトニウムを含む揮発性でない放射性物質がたくさん出てしまった。重いプルトニウムなどは遠くへは飛ばなかったが、揮発性のものが遠くへ飛んで周辺を汚染した。地球全部を汚染した。ソ連政府は周辺30kmを住民13万人を強制避難させた。しかし自己から数ヶ月経ってから事故現場から2百キロ、3百キロはなれたところに濃密な汚染があることが分かった。

岩上: ホットスポット?

小出: ホットスポット。政府は40万人ぐらいのひとを避難させた。チェルノブイリでは発電所から700km先まであるレベルを超えて汚染をしていた。そのレベルは日本の法律に照らすと放射線管理区域にしなければいけないようなレベルの汚染。放射線管理区域とは、私のような特殊な仕事の人間がどうしても仕事の都合で入らなければいけないような場所。水を飲んではいけない、食べてもいけない。そこで寝てもいけない。タバコを吸ってもいけない。子供を連れ込んではいけない。それが放射線管理区域。一般の人が接する放射線管理区域は一般の人がX線撮影を行うような場所。関係者以外無断立ち入りを禁ず、妊娠中の人はちかよれないというような場所。面積は145000km2、本州の6割に当たる面積を「放射線管理区域」にしなければいけないというレベルの汚染。風下で700kmまで届いた。同心円ではなく、東の方700km,西の方500kmの帯状に広がっている面積を全部合わせると14万5千平方メートルということ。

岩上: 汚染された、危ないという地域だけを合わせて?

小出: そう、日本の法律で放射線の管理区域にしなければならないような地域。同心円ではない。

岩上: 避難させた600万人をソ連だから吸収し得た。日本のような狭い地域では吸収し得ない。

小出: もちろん吸収し得ない。

岩上: 国家体制が破綻するとおっしゃった。

小出: そのとおり、何長円何十兆円何百兆円払っても贖いきれないほどの被害がでるとおもう。揮発しないものはふせげるが揮発系のヨウ素、セシウムはだらだら出続ける。チェルノブイリの場合はセシウムは30%出た。福島は今は数%と少ないがこれからだらだら出て行くと、チェルノブイリと同程の汚染地帯が度出るだろうと思っている。

岩上: 日本以外の国では次々とシミュレーションが発表されているのに、日本国内ではではその発表を押しとどめて発表しない。日本では国内でのシミュレーションも全くされていない。

小出: いや、そんなことはない。日本でもシミュレーションはされている。日本は「スピーディ」という計算コードを持っているわけだから、事故が起きた時からずっとやってきたはず。もちろんいまでもずっとやっている。しかしそれを公表してこなかった。本当はちゃんと公表してどっちの方へ汚染が行くということを時々刻々報告しなければいけないと思うが、今の日本ではそれをやるとパニックを煽るからと言って出さない。

岩上: 「スピーディ」は政府が持っている……

小出: そう。日本原子力研究機構が持っている。

岩上: これは出すべき。

小出: そのための研究だったわけだから今出さないでいったい何なんだと思う。

岩上: 原子力損害賠償法に基づく賠償のことなどが脳裏にあっての情報公開制限なのだろうか。

小出: 原子力損害賠償法とは直接関係ないと思う。日本政府が恐れているのはパニック。住民の被爆を恐れているのではなく、パニックを恐れている。私は、住民のパニックを押さえるための唯一の方策は情報をきっちり公表することだと思うが、政府はそうではない。日本の伝統文化だと思うが、これまで日本は、「由らしむべし、知らしむべからず」という方針で、知らせないまま政府の言う事を聞かせるという国だった。今でも情報をなるだけ出さないで、安心だ、安心だ、と政府が言うことを納得させるということで来ている。

岩上: 放射能を多少摂取しても大丈夫だというプロパガンダが延々とされている。放射能の危険性を指摘したAERAの編集長は非常に叩かれて、謝罪せざるを得なくなった。彼は「放射能が来る」という特集を組んだだけ。(今の社会には)非常に危険な空気感がある。だからきちんとした根拠に基づいて危険性を警鐘し続けないと本当にあぶない。特に統一地方選挙の後、大連立を組まれる可能性がある。原子力発電所大政翼賛会、震災大政翼賛会、震災ファシズムのようになって、情報統制される可能性がある。先生の視野は政治や歴史に及んでいるが、この状況をどう見る?

小出: 大変危険な状況だと思う。

岩上: 原子力は政治と深く結びついている。

小出: もちろんです。しかしそのことに付いて話しだすとまたここまでとおなじくらいの時間話してしまうことになる。これから放射能の測定の仕事にいかなければならないので、切りの良い形で終わらせてほしい。

岩上: 大変危険な社会的状況を要約してまとめると、

小出 みなさんは「原子力」という言葉をきいているが、もうひとつ「核」ということばもある。日本人は原子力と核はあたかもちがうものかのように思い込まされているが、実は同じものだ。日本の国がどうしても原子力を進めたいという考えの根本には核開発をしたいという思惑がある。

岩上: 「核」兵器ということ?

小出: そう。NHKすらが「核を求めた日本」という番組を放送して、日本は実は核兵器を作りたかったということを暴露した。そういうことがあまりにも日本人の耳に入っていない。みんな鈍感で見過ごしているが、実際にはそれなのだ。原子力の問題は事故も起こるしたいへんなものだが、現在私たちはその恐怖に向き合っているのだが、それを超えてさらに政治的、社会的な問題が根底に横たわっている。それが、今岩上さんがおっしゃったように大連立の方向に向かったときにますます強化の方向にむかうだろうと思うし、危険な方向に滑り落ちていくと思う。

岩上: あと一点だけ確認。冷やし続けるしかないと、そしてチェルノブイリに比肩するような汚染が拡散するとおっしゃったが、それは海に流すということですね。空中への汚染は遮蔽するとかで止められるが、最終的に、海への被害はどのくらい、われわれはどのくらい避難しなければならないような状態か。

小出: わからない。ただ、日本から見れば、幸いなことに日本は島国で海に囲まれている。また偏西風の影響で大抵の空気中の汚染は太平洋の方に流れている。膨大な汚染水が発電所の中に存在している。トレンチは水を漏らさない構造にはなっていない。だから、地下水が汚れていたと行って大騒ぎしているが、それはあたりまえのこと。地下にどんどん汚染水が流れ込んでいるし、それは海に行くしかない。日本の国に言わせれば「海は広いな大きいな」だから、いくらやったって、薄まってしまって安全だというようなことを言うが、私は放射能に安全はない、薄まるということは汚染を広げるというそれだけのことだと私は思っている。海は世界中繋がっているのだから原子力から何の恩恵設けていなかった国々に対しても汚染を広げている。程度がどれだけか陸地の方でどれだけの汚染が広がるかということは、今は予測ができません。

*文字起こしはサポーターの@reservologicさんとさや亀さんにご協力いただきました。ありがとうございました。

http://iwakamiyasumi.com/
(岩上安身氏のオフィシャルサイト)

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