« 閑話休題・・・・・・穂積ママ | メイン | 原発設計者・上原春男氏 共同インタビュー »

2011年04月09日

●逃げない日本人

今朝の朝日新聞を読んで、感銘を受けた一文があったので、ご紹介する。
M・ウィリアムズ氏の大震災後の日本人の対応についてである。
昨日、校正し終えた私の連載文にも、同じ意味で「大和魂」を使った。
世界に特異なる日本人の伝統的精神性が、
次の世を開く柱となると考えている人々は多いのではなかろうか。

uiriamusu.jpg

「大和魂」に高まる信頼感
Mark Williams マーク・ウィリアムズ

英リーズ大教授(日本学)/前英国目本研究協会長

英国の新聞が震災直後、
煙の上がるがれきの中を通勤するサラリーマンの写真を載せて、
たいへん注目された。

日本にしかあり碍ない光景だ。
こんなとき会杜に出るなんて欧州では考えられない。

私はオックスフォード大で源氏物語を学び、
若いころ群馬で高校の英語教師をした。
いま英国で日本学を教えているが、
知人たちから
「福島の原発労働者はなぜ逃げないのか」とよく尋ねられる。

英語には「Looking After number one」
という言い回しがある。
危機にはまず自分の身の安全確保を、という意昧だ。
もし自分の国で同じことが起きたらどうなるだろう。
放射能と闘うために自分は居残るだろうか。
日本からの報道はそういうことも深く考えさせた。

こちらの人々が強く抱いた日本のイメージは何よりストイツクだということ。
被災者は泣きわめかず、助け合い、
社会はすばやく組織をつくって救援に動いた。
近年、大災害に見舞われた他の国々とは違う。

欧米メディアは背景として武士道の伝統などを紹介したが、
私は大和魂が存在していると思う。

そのあらわれとして、
福鳥の原発労働者の殉教者を思わせるような姿もあるのではないか。
ただ、東京電力の社長はもっとリーダーシップを示せばよかった。
危機の際は誰かが責任をもって、はっきりものを言わなくては。
日本は下から積み上げるコンセンサス杜会だからかもしれないが、
決定も発表も遅く、世界が「東電のいうことは怪しい」と思うようになったのは残念だ。

震災前、世界の日本に対するイメージは矛盾するものが混在していた。
一つは先の大戦によるもので、軍は残虐で捕虜を虐待し、
国は戦後もなかなか謝罪しないというマイナスの面。

もう一つはソニーやトヨタに代表される、
すぱらしい技術や知性というプラスの面。
勤勉で忠誠心も厚い。

震災は、こうしたプラスの面にハイライトを当てた。
日本は天然資源が乏しい。
人間そのものが資源だ。
その日本人への信頼感が高まったことは、
日本が立ち直って国際杜会で生きていくうえで大切な支えになるだろう。

欧州の大学の中には日本にいる留学生に出国を勧めたところもある。
私のリーズ大からも29人が留学中だが、帰したくない。
日本人と一緒にがまんし、一緒に立ち直りを経験してきてほしい。

実は、震災前に私は秋田の国際教養大から、副学長にと請われていた。
赴任の準傭をしている。
9月の学期から、ぜひ日本の学生と語り合いたい。
(構成・橋本聡)

コメント

私も今朝の新聞でこの記事を読み、揺さぶられました。
うれしいですね。元気出ますね。
震災の地からは遠い大阪の地に住んでいますが、阪神大震災の時には職場が少なからず被害にあい、不便な生活を経験しています。
いま、何もできずもどかしいですが、ともに乗り切るという思いはいつまでも持ち続けたいです。

コメントする