●春がよんでるよ
![img2089[1].jpg](http://www.mahoroba-jp.net/blog/img2089%5B1%5D.jpg)
(友竹正則、NHK東京放送児童合唱団
1963年(昭和38年)2月-3月期放送)
一昨日、NHKFMをかけながら仕事していると、
突然、子供の頃口ずさんだある歌が流れた。
その時、鳥肌が立ったというか、
懐かしさが込み上げて来て、
その日以来、曲が頭から離れることがなかった。
他人が聴くと他愛もないと一笑に付されるであろうが、
当の本人は何故か真剣になってしまった。
それは「春がよんでるよ」という童謡、
1963年に「みんなのうた」で放映されたポーランド民謡だった。
http://j-ken.com/category/all/data/669787/
「春がよんでるよ」
ひばりのこ すずめのこ
飛びながら 何を見た
ホーヨホヨヨ ホーヨホヨヨ
春がよんでるよ
あの土手に 寝転んで
お弁当 食べたいな
ホーヨホヨヨ ホーヨホヨヨ
春はすてきだよ
もぐらのこ かえるのこ
動き出せ 目を覚ませ
ホーヨホヨヨ ホーヨホヨヨ
春がよんでるよ
ほがらかに 歌う空
若草も 声合わせ
ホーヨホヨヨ ホーヨホヨヨ
春の歌声よ
(作詞:小林幹治 曲:ポーランド民謡)

(島田浩ph)
軽やかな澄み切った青空に、
今にも燃立つ春の気が、
期待に満ち充ち、嬉しそうに
人も動物も野原に駆け出しそうになる
明るい曲なはずが、
何故か儚い陰影を落としている。
その短調の短いフレーズの中に、
悲しい物語が隠されているようで、
それはポーランドの辿った悲哀の歴史が
民謡として歌い継がれたものだろうか。
幼稚園の児も歌っているこの唄に、
音楽のもつメッセージの深みを感じて
胸が締め付けられるような叙情に泣いた。
![2141593452[1].jpg](http://www.mahoroba-jp.net/blog/2141593452%5B1%5D.jpg)
(よだかの星)
「春がよんでるよ」の
ホーヨホヨヨ ホーヨホヨヨのフレーズに、
後に学んだ古歌、
ほろほろと 啼く山鳥の 声きけば
父かとぞ思ふ 母かとぞ思ふ
の音調が、既に少年の心に届いていたのだろうか。
歌うたびに切なくなる節に、
今は亡き父と母を思い浮かべるのだろうか。
宮沢賢治は散歩をしているときに、
時々「ほっほー ほっほー」と叫んで飛び上がったという。
「鳥のように…唄って暮した」という賢治の心の水底にも、
この「ホーヨホヨヨ ホーヨホヨヨ」の調べが何時も流れていたのだろう。
![Img0025[1].jpg](http://www.mahoroba-jp.net/blog/Img0025%5B1%5D.jpg)
当時、戦前に国内では聞かれない欧米の民謡や童謡が、
「みんなのうた」で紹介され、何よりも毎日テレビから
流れてくるその歌声を楽しみにしていた。
少年少女合唱団の高く澄んだ声に憧れたものだ。
![img2088[1].jpg](http://www.mahoroba-jp.net/blog/img2088%5B1%5D.jpg)
(おお ブレネリ)
ちょうど小学校の4年から6年生にかけてだろうか、
裏声が出て、自分でも驚くほどの歌唱に酔った。
いわゆるボーイソプラノという領域だろうか。
音楽で歌うことを、どんな学科よりも好んだ。
それで、女の子にもてた事も、気を良くさせたのだろう。
しかし、中学に入ると同時に、その声は失われ、
それまでの天上の気分は一遍に吹き飛んでしまった。
その3,4年間の数々の思い出の曲が、私の情操を
育んでくれたのだろう。
きっと、同年代の人は、少なからずそんな気持ちでいただろう。
![img1811[1].jpg](http://www.mahoroba-jp.net/blog/img1811%5B1%5D.jpg)
(踊ろう楽しいポーレチケ)
少年時代、あの青空の彼方に何を見ていたのだろうか。
「ホーヨホヨヨ ホーヨホヨヨ・・・・・・・・・・」
虚空からの呼び声が届いているだろうか、今の私に。
ホーヨホヨヨ ホーヨホヨヨ・・・・・・

(島田浩ph)