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2011年08月22日

●「人生は運と縁の二つで決まる」

メリヤス卸問屋の3代目として戦後、身を起こし、
   昭和30年に「サン モトヤマ」を設立。
   グッチ、エルメス、ロエベなど、一流ブランドの
   輸入販売を手掛け、日本に世界の文化をいち早く紹介してこられた
   茂登山長市郎(もとやま・ちょういちろう)氏のお話をご紹介します。

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        「人生は運と縁の二つで決まる」       
       
            茂登山長市郎(サン モトヤマ会長)
  

           『致知』2011年9月号
              連載「20代をどう生きるか」より

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 私は今年の秋で満九十歳になるが、
 人生というものは「運」と「縁」の二つに尽きると
 最近になってつくづく思うようになった。

 運とは天から授かるもので、縁は自分からつくるものだ。
 煎じ詰めれば所詮、人生は誰に会ったか、誰と会えたかで
 決まってしまうと言っても過言ではない。

 私が茂登山家の商人の子として生まれたというのも運。
 戦争へ行った先で天津の街を見、
 ヨーロッパの文化に初めて触れられたのも運。

 戦地では五年間を過ごし、一時は野戦の病院で
 三十四キロにまで体重が落ちるなど、
 いつ死んでもおかしくない状態に陥ったこともあったが、
 奇跡的に立ち直り、再び野戦に戻っていった。
 これもまた運の一つ。

 復員した時に父が焼け野原の東京の有楽町駅前で
 店を続けてくれていたことは最大の運だが、
 しかもそれが有楽町の当時アメリカ村といわれた場所で
 外国人と直に会うチャンスがあったということも。

 一方で、有楽町の毎日新聞社の中で
 仕事をしていた報道写真家の名取洋之助さんに
 お会いすることができた。

 私はお会いするなり、これは大変な人だと思い、
 名取さんを尊敬し、この人から何でも得ようと思って、
 いろんなことを一所懸命に勉強した。
 これは自分からつくった縁。
 
 しかしよく考えてみると名取さんに会えたこと自体、
 有楽町にいたからという運なのかもしれない。

 つまり運と縁とは、表裏一体のものであると思う。
 天から授かった運をいかに掴むか、
 それをどれだけ感謝していただくか。
 
 そしてその運を生かすために、
 縁をどのように自らがつくっていくかが
 人生の決め手であると思う。

         
        * *


 僧侶であり作家でもあった今東光(こん・とうこう)先生も
 また私のことをよく可愛がってくださったが、
 ある時こんな話をしてくださったことがある。


 「長公、人間ってものは一番おもしろい動物なんだぞ。
  人間は美しいものが分かる。美しいものがつくり出せる。
  絵でも彫刻でも小説でも、あらゆる美というものをつくり出せる。
  美に遊べる唯一の動物なんだ。

  その人間に興味を持たなきゃダメだ。
  人間を好きにならなきゃ人生はつまらないものだぞ」
  
  
 今先生はいつも「人との出会いを大切にしなさい」と
 言われていた。そこからまた運も縁も生まれてくるのだと。

 いまの人は「自分は月給をもらっているから働いているんだ」
 という傾向が強く、言われたことだけは完璧にやる、
 という人が多いように見受けられる。
 
 しかし月給をもらっているのであれば、
 言われたことを百%やるのは当たり前のことだし、
 それは義務というものだろう。

 本当に自分が運と縁とを勝ち取ろうと思えば、
 人に言われないことをする。
 そしてあらゆることに感謝の気持ちを持つこと。
 
 これが天から運を授かり、それに続く縁と
 そのまた次の運をつくり出していくことに
 繋がるのではないかと私は感じている。
 


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