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2011年01月03日

●「寿限無/じゅげむ」2

落語の前座噺として、つとに有名な『寿限無』、
早口言葉,言葉遊びの古典的な噺でもある。

「寿限無、寿限無(じゅげむ じゅげむ)
五劫の擦り切れ(ごこうのすりきれ)
海砂利水魚の(かいじゃりすいぎょの)
水行末 雲来末 風来末(すいぎょうまつ うんらいまつ ふうらいまつ)
食う寝る処に住む処(くうねるところにすむところ)
やぶら小路の藪柑子(やぶらこうじのぶらこうじ)
パイポパイポ パイポのシューリンガン
シューリンガンのグーリンダイ
グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの
長久命の長助(ちょうきゅうめいのちょうすけ)」

この元のネタ話は、産まれて来た赤子が
何故か、スグ死んでしまうので、
長命を願った親が和尚に名付けを頼んで、
長い名前をつけてもらうのだが、
その長い名が元で死んでしまう、という筋書きだ。

それと同じ内容で、違う名前を、
私が小さい頃、枕元で、
母が話してくれた寝物語を、
今でも覚えている。

母は祖母から聞かされたというから、
祖母出身の福島・会津若松地方で、
伝わっている話かもしれない。
どなたかお知りの方は、
ご一報下さい。

昔々、ある村に、子供のいない夫婦がいたそうな。
生まれても生まれても、すぐ死んでしまうので、
山寺の和尚様に、どうしたら長生きできるか尋ねると、
それは長い名前をつけると良い、といわれ、
長い長い名前をつけてもらったそうな。

イッケモッケ、ケエーモッケ、
キンチャクチャキノ、チャキモッケ、
トウリノトットシ、タカイボシ、
マイマイバヤシノ、マイバヤシ
チャキチャキニュウドウ、
シャーシンボウ、
シャータカニュウウドウ、
トリモノベット、
チャワン、チャビヒコ、
ヒコネノヒコスケ。

その名のせいか、スクスク無事に育って一安心。
ところが、ある日、その子供が家の井戸に落ちてしまったそうな。
そこで、おっかさんは、隣のばあさまの家にはしごを借りに行って、

「助けてくだされ!!!
イッケモッケ、ケエーモッケ、
キンチャクチャキノ、チャキモッケ、
トウリノトットシ、タカイボシ、
マイマイバヤシノ、マイバヤシ
チャキチャキニュウドウ、
シャーシンボウ、
シャータカニュウウドウ、
トリモノベット、
チャワン、チャビヒコ、
ヒコネノヒコスケが、
井戸に落ちてしまった!
はしごを貸してくださいな・・・・・・・・」

すると、ばあさまは
「なーに、なんだって?」
なにせ、耳が遠くて聞こえません。
それで、聞き返すと、

「イッケモッケ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ヒコスケが、
井戸に落ちてしまった!はしごを貸してくださいなーーーー」
おっかさんは、必死に子の名前を叫んで、
ことの急を告げるが、とんと通じません。

何度も何度も、くり返して、
やっとのことで、分かった頃には、
可愛そうにも、子供は、溺れ死んでしまったとさ。

なんとも遣る瀬無くも、たわいない話なのだが、
昔は、子供の生存率が低く、民の寿命はそのために低かった。
施す抗生物質も無く、口にする栄養も事欠く毎日であっただろう。

その長い名前を、繰り返し繰り返し呼ぶのが、憐れをそそる。
しかし、そこをユーモアたっぷりに、笑いの中に隠してしまう、
この話の妙味に泣かされる。

昔の人の語感の豊かさ、情の深さに、
今の時代でも共感を呼ぶ。

寿限無に隠された、人の寿命の長さへの憧れ、
「イッケモッケ・・・・・・・」の長い名前にあやかって、
今年も、健康長命をお互い祈願したいものだ。

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