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2009年11月11日

●森繁さん逝く

昨夜、森繁久弥さんが長逝された。
96歳の老衰、まさに天寿を全うされての大往生だった。
芸能界初の文化勲章を授与されるなど、不世出の役者として惜しまれた。

森繁 1.jpg

しかし、私としては、晩年よりも若き日の森繁さんが懐かしい。
小学校4,5年生の頃、学校から帰ると決まってレコードをかけて聞き惚れる。
それが森繁さんのレコード「おらが歌さ」だった。
あの「どじょっこだの、ふなっこだの・・・・」の方言なのか、
何とも言えない言葉の含みに魅了されていた。

「おれは河原の枯すゝき・・・」の『船頭小唄』や『月の砂漠』、『妻をめとらば』
「嗚呼玉杯に花受けて・・・・」と『旧制第一高等学校寮歌』などなど、
みんなとはちょっと変った子供だった。
小さいながら、大人の抜けた雰囲気、洒脱と言う境地を嗅ぎ分けていたのだろうか。
NHK紅白の「フラメンコかっぽれ」の芸達者に悦びに喜んで、
当時、若手の流行り歌なんか、見向きもしなかったものだ。

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森繁 5 フラメンコ.jpg

とにかく「社長00」シリーズが大好きだった。
のり平さんや大介さんが良い脇役をしていて、
淡島千景さんとの夫婦(めおと)役は、何とも言えず味があった。
そこはかとない色気や心の間合いというか、絶妙な遣り取りがたまらなかった。

森繁 4 白蛇伝.jpg

ディズニーに続けとばかりに、日本初の映画版カラー長編アニメが「白蛇伝」だった。
その主役の若い書生・許仙と他の男優一人十役が森繁さん、
相手役、蛇精の白素貞の声優が宮城まり子さんだった。
その画面の美しさに心ときめき、友達と共に心酔していた。

その後、あの「知床旅情」が大ヒットして、TVのホームドラマ「七人の孫」から、
「屋根の上のバイオリン弾き」まで膨大な芸暦は、その人となりを形成した。
NHKラジオの50年も続いた「日曜名作座」、
加藤道子さんとの語り口にもしみじみと心打たれたものだ。
ウイットに富んだ話術や、コメディアンとしての一面が幅広い芸域を広げた。

森繁 2.jpg

また観てみたいと思う数少ない芸人さんの根底は詩人だったのだろう。
軽々と飄々として歩き通した人生は一篇の詩だった。
笑いの裏に漂うペーソス(哀愁)があってこそ、その笑いが昇華された。
役者の背に、人生の哀感が見えなくては、虚しいバラエティで終る。

戦争時、アナウンサーとして中国に渡り、ソ連軍に捕えられるなど、
筆舌に尽くし難いほどの辛酸を舐め、目を覆いたくなる場面に遭遇したと言う。
それが、心の根底に横たわって、コメディの裏にシリアスな影が動くのだ。

とまれ、幼年期に森繁さんと出逢い、人生の見本のような姿を見せ付けられ、
私もまた、形だけでも軽々と後半生を歩みたい、と思った。

天国でのご冥福を祈ります・・・・・・・

コメント

昨夜、森繁さんの追悼番組を見ました。あらためて大きな俳優さんだったと思いました。ラジオに耳をつけて聞いた日曜名作座はあまりに真に迫りこわいくらいでした。 
今頃最愛の奥様息子様とお会いになってらっしゃるでしょう。
祈。

そうですね。
誰の心にも残る、またとない方だったですね。
「懐かしい」とは、このことでしょう。
だんだん情緒の人が少なくなって来まして、寂しいですね。

本当に。宇野重吉さん、緒方拳さん,三木のり平さん、深みのある俳優さんが、いなくなって寂しいですが、29日夜8時から始まるnhk坂の上の雲に出演の熱き俳優さんたちに少し期待してます。

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