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2009年06月14日

●源氏の色から 「吉岡幸雄展」

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今、愛海詩(えみし)さんで「吉岡幸雄展」開催中。
先日、お会い出来た。2年ぶりだろうか。
残念ながら、連日、金鋒先生、森下会長との同行が続き、
氏の講演会や会食に参加出来なかった。

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ことの外、残念に思われたのは、
新著「源氏物語の色辞典」を拝見してからだ。
見開くと、次々に展開される各帖の色合い。
眼が覚めるような色調に、平安時代の情緒の深さを偲んだ。
岡潔先生は、「源氏から日本の精神文化は穢れた」と語っていた事を思い出す。

しかし、それを言い出す前に、
「あぁ、現代人は、色を失ってしまった!!」
と嘆息しつつ茫然自失するばかりだ。
当時の恋愛を通して、情けの彩りの如何に深々として、
喩えようがなったかを知る。

単色が極めて複雑なのだ。
色々な色合いと濃淡が、縦横に入り組んで染め成し、
それは万象の色を人の手で再現するかのようでもある。

我々を取り巻くほとんどと言ってよい色は化学染料に染まり切っている。
複雑なようで、実は単純に系列化されてしまっている。

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しばし、その古色の世界を覗き見られたい。

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しばし、短い間、吉岡さんと雑談しながら、
骨董のこと、歴史のこと、奈良のこと、人物のこと・・・・・
こんなに愉しい一時は、自分の身近におそらくないであろう。

話は、李朝の器に及び、鑑定しながら
吉岡さんの目利きの鋭さ、早さには舌を巻いた、というか
ほとほと感心して、それが実に面白く勉強になった。

親父の代から骨董屋通いをして、
自分もガキの頃から、出入りして小遣いで蕎麦猪口を買うほど
眼が肥えざるを得なかったらしい。
兎に角、話が愉快だ。

そんな中で、時効で話しても良いらしいが、
川端康成氏の骨董収集の裏話には笑ってしまったと言うか感心した。
川端さんの骨董好きはつとに有名で、
あの国宝になった玉堂の画の買い付け話は今も語り草になっている。

普段、行きつけの骨董商で、値打ち物を目聡く見つけるや、
「おっつ、これを借りるよ」と言ったまま、家に持ち帰るらしい。
そんな逸品がごろごろ宅にあって、とうとう氏が亡くなった時、
奥様が馴染みの骨董屋数軒を集めて
「生前お世話になりました。
これらの品々、主人はおそらく買わないでお借りしたものでしょうから、
お返ししますか、お払い致しますので、いかほどか言ってくださいまし」
と訊ねたという。

ところが、並み居る骨董の主人たち皆異口同音に、
「いえいえ、生前ならまだしも、お亡くなりになった後で、大層手前共も先生には、言い尽くせないほどお世話になりましたので、この件はご遠慮戴きとうございます」と言って請求を辞退して、そのまま立ち去ったという。

この逸話に、これは言い出した奥様も偉いが、
料簡の広い骨董屋も偉いと感心することしきり。
実にその額は半端でなく、何千万という桁違いのものだったらしい。

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次に、吉岡さんとよく対談する坂東玉三郎さんの話。
「彼は、晩7時以降、食を口にしない。
だから、会食するには4時から用意しなければならない。
私生活はシークレットで、何時もストレッチを欠かさず、
自己管理が厳しい」

なるほど、あの完璧と思われる美の極みは、
普段の節制にあるのか、と改めて精進の凄みを教えられた。

そして、とことん追求する美意識。
歌舞伎役者の多くは松竹の借り衣装で演ずると言う。
しかし玉三郎さんは、自分の気に入るものでないと着ない。
畢竟、すべて自前になる。
一具、数千万にものぼる。

しかし、金にいとめをつけず、肝心な事に金子を注ぐ。
その心意気に感心してしまった。
大事を何に見るか。
その決断は、人物の大きさでもあった。

コメント

ため息の出る古代色の世界に、ただただこころ和みます。

毎日、毎日介護のために病室と化した場所に居ると、雨に似合う花菖蒲、紫陽花、もやの中の躑躅など季節の花の中に、ゆったり吹く風の静かな世界が、燃えるような浅黄色の季節を感じます。

普段着物を着ない自分の世界には、程遠くなった大和の色々。

う〜ん、と目の保養になりました。
それにしてもこんなに綺麗に再現できるPCにもおどろ行きました。

今夜もありがとうございました。
早速てにとって頁を繰って見たいと思います。

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