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2008年10月16日

●仏師 冬水

弥勒佛 3.jpg

先日、名寄の能面師・松本冬水氏より、
仏像を彫ったとの手紙に写真が添えられてあった。

京都・広隆寺の弥勒佛の写しである。
見事と言う他はない。
一度も仏師に師事したことがないその技量は、
これまで専心自力で能面を彫りこんで来た賜物なのだろう。

専門家がどう評価するか否かの次元は、とうに過ぎている。
無雑な心境、研ぎ澄まされた三昧心は、
見る者をして惹きつける。

そして、何よりの功徳が、
冬水さん自身の健康である。
能面を彫っていた3年前まで、病苦が彼を襲っていた。
しかし、釈迦如来の仏像を彫り始めた頃から、
メキメキと元気を取り戻して来たのだ。
今では、すっかり声にも張りが出て来て、一同みな安心している。

能楽は幽冥のあの世とこの世の怨霊・亡霊の物語が多いから、
面そのものになって彫ると、その霊魂に覆われ、心身苛むのだろう。
仏像では、清浄光、歓喜光に包まれて、癒される。
きっと、これを拝する人々に功徳を施す佛菩薩が出現するに違いない。

冬水さん お面.jpg

しかし、これからが冬水さんの正念場でもある。
これまでの伝統的な造形と形式から脱し、
彼自身の何物にも依らない
独自な境涯がどのような像を結ぶのか。
その行方が楽しみである。

この世知辛く、喧騒な濁世に背を向けて、
ひたすら我が信じる道を歩み続けている冬水さんは、
まさに古き世から甦った求道者である。

彼と同じ時代を生きている仲間として歓び、
彼の精進を学んで行きたい。

弥勒佛 冬水作.jpg

(ちなみにこの弥勒菩薩、高さ40cmで、60万円。3ヶ月費やした。
ご注文に応じて彫られるという。
〒096-0066 名寄市日進90 
松本冬水 п@01654-2-1047)

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