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2007年04月09日

●立国は私なり

致知 1.jpg
http://www.chichi.co.jp/

毎月送られてくる月刊誌「致知」。
5月号の表紙を飾る顔に、何処かで見た覚えがあるな・・・
と思って、最初の頁を開くと、何と恵庭市長・中島興世氏が載っていた。
「どうして、ここに出てくるの?」
と、我が目を疑ったが、
そのインタヴューを読んで、度肝を抜かれるほど驚いた。
そんな奇跡のような信じられない話が、何時の間に起こっていたのか。
それは、近い我々が知るより先に、全国に知らされるほどの内容であった。

実は、恵庭は私が生れ育った町で、
千歳の隣町、人口約7万弱の知られざる片田舎である。
昔より、農業酪農の村、今は札幌のベッドタウンになっている。
東西南北に自衛隊駐屯地があるほど、自衛隊の町でもあった。

そこで、何が起こったのか。
それは、市長選挙の大逆転劇だった。
奇しくも昨日は、知事、市長、道・市議会の選挙でもあった。

一介の市議に過ぎなかった中島氏が、
立候補したのは、何と選挙の46日前。
人手は家族と手伝いで4人。

相手は現職の市長で、圧倒的な後援会組織を持ち、磐石だった。
自衛隊がある故、自民党推薦で、当選確実だった。
この「地盤・看板・かばん」の三拍子の揃いも揃った市長に、
勝つ見込みは、これっぽっちもなかった。

町内会や企業・組合でも一回の挨拶もさせられず、
議員仲間の勉強会には村八分で、完全に孤立無援状態だった。
まさに「泡沫候補」の孤独な一人相撲で、
周りからは、笑いの的にされるに過ぎなかった。

しかし現市長は、一点「総合運動公園」を造ることを、公約に掲げたのだった。
実は、これが命取りだったことを、当時知る由もなかった。
夕張の破綻に見られるように、表向きの建物や施設を派手に造ることで
どれほど、市の財政を逼迫させ、市民の懐を困窮させて来たか。
全国の、どの自治体も財政が厳しい中、
ことに箱物の維持管理が大変で、みな投げ出したい
「財政再建団体」指定候補の処ばかりなのだ。

前の首長の名誉が、後の庶民の首を絞めているのが現実だ。
議員は、巨額の金を国から引き出し、
建物を無闇に立てて、自分の名を残そうとする。
それが、発展や繁栄だと錯覚している。
その後始末を誰がし、その借金を誰が返すのか。
道内のテーマパーク、第三セクターやリゾート計画など悉く失敗に終わっている。

身近な例では、
年々衰退減少する青果・海産物業者の現状と
市場のせり制度の役割が薄れ行き、
予約相対制度の流通形態が広がる中、
どうしてあれほどの巨大な新市場が札幌に必要なのか。

逼迫した財政、大赤字の
北海道と札幌市が、どうしてそれを計画変更してでも
中止しなかったのか、理解しがたい。

どうして、古いまま大事に利用し続けられなかったのか。
市民の肩に道市民税の負荷がかかると分かって実行するのか。

みな、机上の論議で、経営者としての切実な視点を持ち合わせているのだろうか。
そのツケ、負の遺産は、皆子孫が受け継ぐ。
これ以上、無闇に借金を作るな、と言いたい。

致知 2.jpg


中島氏は、それをついた。
「総合運動公園」建設を、真っ向から反対した。
市民は、最早形の上の政策には踊らされなくなって来ていた。

そこで、中島氏は明確なヴィジョンを立て、
マニフェストを全市民が、最後まで読み切れる
分かりやすい絵本仕立てで、そして
全戸に確実に届ける作戦を立てた。

それを、40人のボランテイアで配り切ったのだ。
そして、それには明確な主張が述べられてあった。

これは、日本全土に言えることだが、
インフラ整備で巨額の税金が闇から闇に動くことを
もう誰もが望んではいない。

今は、幼児、いじめ、学校、環境問題に皆頭を悩ましている。
ことに、女性が、母親が悩んでいる。

男性の思考・感覚の形骸政策は、時代錯誤になりつつある。
今は女性と次世代の子供に思いを馳せる政策でなければならない。
これは、橋を架けるより、道路を延ばすより、
目下の急務なのだ。

「体を育てるのはミルク、
心を育てるのはブック」
何と今まで、誰もが訴えたこともない政策。
読書環境を整えるという、誰もが
「エッ・・・・・?!」と目を見張るようなキャンペーンを張ったのだ。

「子供の読書量が、国の未来を決定する」という
およそ、選挙には似つかわしくない、
即戦力には役立たぬような、
理想と信念を掲げて、一枚のビラで訴えたのだ。

目先の利益を捨て、
長久の視点をもって、百年先を見据えていた。
国策で取り上げるべき課題を、
名も知れない一市町村で、真顔で訴えたのだ。

この中島氏も、桁違いに偉いが、
これに呼応して投票した市民も偉い。
さすが、我が恵庭市民と誉めたいぐらい、
何と九分九厘の予測を覆して、
勝ったのだ!!
まさかの大番狂わせ、誰が予測し、誰が信じただろうか。

図書費を全国一の4倍に増やし、
国語力が人間形成の根幹として、
幼児からの子育てに町ぐるみ、市民ぐるみで
本気で取り組んだ。

「プレセンター」という親が互いの子供を預かる制度も実施。
親は子育てを学び、子等はいろいろな年齢の子から学ぶ。
正に、昔の近所付き合いの場が再現されたのだ。
この閉鎖地域に風穴を開ける構想だった。

氏は市議の時代から、
自費で海外や国内を視察で飛び回り、
ニュージーランドのクライストチャーチに学び、
恵庭の名のように、本当に「日本一の花の町」を実現させたのだ。
ガーデニングの町として、内外から視察に来るほどになった。

そして、さらに「地産地消運動発祥の地」としての農業回帰の運動にも取り組む。
「田舎倶楽部」という仕組みを作り、
市民が集って、農家に春に一年分の野菜代を払い、
草取りや、収穫の手伝いをして、消費者が農家を支える。
冷害の時は、返金せず、痛みを共に分かち合うという意識の共有。

こんな互助精神の理想的な町作りが、実際行われていることは奇跡的なことだ。
これは奇跡の選挙を起こした市民の意識がそうさせたものだった。

氏は語る。
「百人が百人賛成する仕事は、どだい大したものではない。
百人が百人反対する中で、成し遂げる事こそ、歴史に残る仕事である。
リーダーが強い信念で進めば、必ずや門戸は開ける。」と。

そして、最後に、
『立国は私なり』
との福沢諭吉翁の言葉を引用された。

「正心修身斉家治国平天下」
天下国家は、一個のこの五尺の志にて動く。

正に、この小さい町に起こった変革が、
日本全土にも広がる先駆けとならんことを。

かつて、亡き父が、この町の不正に憤って身を立て、
同じような逆転劇に協したことがあった。
権に寄らず、利に背く者は、
何時の世にも、虐げられ、欺かれる。

これからは、己を捨て、私を省みない
大傑物の出でん事を。

しかし、それは一人の人を待つのではなく、
各々、一人一人が独歩して立つべき時代と信じる。


恵庭岳.jpg
(幼い頃から、この恵庭岳を仰ぎ見て育った、我が心の富岳である。)

コメント

素晴らしいお話を聞かせて頂き、感動しました。
「これからは、己を捨て、私を省みない
大傑物の出でん事を。

しかし、それは一人の人を待つのではなく、
各々、一人一人が独歩して立つべき時代と信じる。」

一人一人が独歩して立つべき時代に同感です。まさにその通りだと思います。
この世に生かされている以上
きっと一人一人に託されたその人にしかできない、この世を良くする為に必要な使命があるに違いないと思っています。

何と素晴らしい行政案でしょう
恵庭は、私にとっても縁のある地。
祖母の育った所で、祖母や母から昔の恵庭の話しを聞いて育ちました。
驚く事に、宮下氏のご実家と名前を度忘れしましたが橋を挟んで隣組だったのです。
宮下氏のご実家は料亭と聞いておりますが、
祖母の実家では朝から宴会がよく行われていたと聞いておりますので、きっととてもお世話になっていたのでしょうね。
まあ、そんな余談はいいとして、
本当に理想的、出発の基本は、いかに自立しているかだと思うのです。其処から真の助け合いが生まれると思っています。
子供は宝者、心して磨かないといけませんものね。そして子供は、親にとっては、沢山の悩みをプレゼントして、親の忘れてしまった成長を促して、気づきをくれるプレゼンテーターでもあるのです。恵庭が楽しみですね。
この、ブログの発信時間も素晴らしい。
21:23
辻さんの言う、22を越えていけという世界を暗示しているのかも・・・・
前にも書きましたが、宮下氏のブログの発信時間は、本当に意味深いのです。
まるで、宇宙がしっかりと顕在意識に落し込んでおきなさいよとでも言っているようです。
あてつけ・こじつけ大好きな私には本当にたまりません。

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