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2007年01月30日

●楽しむこそ、物の上手なれ

吉田秀和.gif

今、私の部屋にNHK・FMの『名曲の楽しみ』が鳴っている。
R・シュトラウスで、余り好みではないのだが。
でも、軽妙で温かな語り口の吉田秀和さんの声を聞くと、
何故か、ホッとして知らずに聞き込んでしまうようなーー。
曲名や演奏家を紹介する際のドイツ語の発音も、
嫌味に聞こえず、快く聞こえるから不思議だ。

既に90歳を越えてしまわれたが、
未だに現役で、明瞭で分かり易い言葉と
洞察眼は衰えてはいない。
昨年、文化勲章を授与されて、
長年にわたる音楽評論や随筆に対する
社会的位置づけが初めて確立された。

私の若き頃、前衛音楽集団
「二十世紀音楽研究所」の所長に就任された。
決して古典アカデミズムを固守するという構えでなく、
良いものは良いとして、進取の気象もあり、
若き芽を育てて行こうという大らかで温かな眼差しがあった。
当初「音楽以前」と酷評されていた武満徹さんも、
吉田さんは初めから、この若き天才の煌きを嗅ぎ取っていた。

その肩の力を抜き、淡々と語る音楽への愛情が、
何よりも、こんなに長く評論を続けて来られた秘訣だったのだろう。
とにかく根っから音楽が好きでたまらないという風だ。

評論の神様、故小林秀雄さんの
近くに居を構えて、鎌倉が長い。
「好きなものは?」との問いの最後に、
氏は「発見の楽しみ」を加えていた。
グレングールドをLPで探し当てた時などなど・・・。


吉田秀和全集.jpg

そして、それは音楽に限らず、本からも
楽しみの泉はあった。
孔子のこういう文に、出会ったという。

「『子曰知之者不如好之者。好之者不如楽之者。』
すこし書き直してみると、
『子は言う。之を知る人は、之が好きな人に及ばない。
之が好きな人は、これを楽しむ人に及ばない。』
とでもなかろうか。
音楽評にも通じる話で知識ばかり開陳して
結局何が好きか分からない文章。
これが好き、あれは嫌い、と威張っている文章。
好き嫌いでなくて楽しみを知る人の書いたもの。」
と、氏は記している。

言葉が溢れている情報社会の中で、
人生の楽しみや歓びが、滲み出るような文章に
なかなか会わない、
批判のための批判や
自己顕示のための知識の披瀝は
もう沢山とでも、語っているのだろうか。

小林秀雄さんは、批評の極意は
「その人を愛することから始まる」
と、言っていた事を思い出す。

孔子は、
「粗末な食を喰らい、水を飲んで、肘を曲げて枕にする。
楽しみは、またその中に在り。・・・・・」
とした貧しい境遇の中でも、
道を楽しんだ。

何事も
好きを通り越して
楽しみまで行かねば、
物事の本質が
見えてこないのだろう。


道なお遠しといえども、
この毎日の生きていることの
楽しさ、嬉しさを
大事に育てて行きたいと思う。

コメント

・・・いつだったか、一生懸命になりすぎるあまり、こだわりすぎてかえってこじれてしまって反省し、ふと我に帰った時、相手の為のつもりが自分のことしか考えていなかったことに気付きました(‐−;)

その時に浮かんできた言葉が「味わい 楽しむ」でした

考えてみれば自分が大切に思っている人・物・事は考えるよりも味わって楽しんで、そして感謝してますます大切にしますよね。
そうじゃない時は、まだ味わえていない・・・まだ愛せていないってことだったのではと・・・

小林秀雄さんの批評の極意は「その人を愛することから始まる」なのですね。

そんな気持ちの中から生まれた言葉って自分も人も幸せな気持ちにするのかもしれませんね

ある時、虫が飛んできて「ギャッ!」と取り乱していた私に、余裕顔で「遊んであげればいいんですよ〜♪虫たちも動物たちも〜♪こんにちは〜♪」と挨拶して虫と遊んでいた人がいましたが、その時も考えさせられました〜(笑)

できれば楽しむための余裕を沢山育てて、幸せサイクルを沢山つくりたいです

首藤さんからまほろばさんのSarahのチョコレートをいただきました。初めは何で木の箱に入っているのかなと思いましたが、この木の箱がイエスの十字架を連想させますね。そしてこのチョコレートを一口かじってみましたら、なんて固いチョコレートなんだろうと思いました。首藤さんにこの固さをお聞きしたところ、「それは、コンクリートのようなつくり方だね、コンクリートもセメントの中に砂利とか骨材を様々入れて作ると固くなるんだよ、そして、均一な大きさの砂利だけで作ったコンクリートは大きさが大中小の骨材で作ったコンクリートよりは弱いんだ」ということをお聞きしました。やっぱり、均一になるというのは弱いんですね。まほろばのチョコレートの固さをしみじみ味わいながら、やっぱりこの固さが人生の味わいなのかなって思った次第です。素敵なチョコですね。ところで、値段はおいくらなんでしょうか?私もお友達に勧めたいのであと何個くらい残ってますでしょうか。お知らせ下さいね。

春菊さま。
ありがとうございました。
木箱が十字架ですか、なるほど。イエスに相応しかったんですね。
コンクリートですか、面白いですね。綺麗な歯を欠かさないで下さい。
一般のチョコは、乳化材や糖分を多く使うから柔らかくなるのでしょう。詳しい説明は、HPのサラ・チョコの欄をクリックしてください。http://mahoroba-jp.net/catalog/
原料を沢山仕入れていますので、ご心配ないですよ。何本でもお送りいたします。これからも、よろしくお願いいたします。是非、札幌に一度遊びにお越し下さいませ。

人生色々な山坂を通り越して、楽しみのご褒美がもらえるのでしょうね。
全部ひっくるめての楽しみ、これからですね、音香さんの人生は。

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