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2010年10月13日

●「禅寺丸」談義

既に、柿の季節である。
だが、今年は全般に成り物が良くない。
無論、野菜もそうであるが、量質ともに芳しくない。
柿も例外ではなく、ことのほか高値で推移している。

その柿について、これまで幾度となく触れて来た。

http://www.mahoroba-jp.net/blog/2008/10/post_375.html

http://www.mahoroba-jp.net/blog/2007/12/post_183.html

昨日、神奈川の川崎にお住まいの山上敦子さまから、
ありがたくも「禅寺丸」が送られて来た。
私にとっては幻の柿で、箱を開けてびっくり!!!
26年間、市場で一度もお目にかかった事がない珍種なのだ。

ところが、山上さんの近くの「柿生(かきお)」こそ、
その「禅寺丸」の発祥の地だったのだ。
お許しを得て、その手紙を披瀝させて頂く。
では・・・・・・

禅寺丸 壺.jpg

「宮下様

いつも「まほろば」のブログを拝見させて戴いております。
そして、又厚別店・渡辺店長には配送をお願いし、大変お世話になっております。
昨年の今頃だったでしょうか。
禅寺丸柿の苗をお求めになられた由、拝見致しました。

http://www.mahoroba-jp.net/blog/2009/10/post_552.html

そんなにも思い入れがおありなら、すぐにでも召し上がって頂きたいと思い、
農協直売所に問い合わせましたが、残念なことにすでに終わったとの事でした。
今年は早い目にと昨日行ってみましたら並んでおりました。
ほんの少しですがお送り申し上げます。
どうぞ、ご笑納下さいませ。

私の住む、麻生区は禅寺丸の発祥の地です。

zenjimaru1[1].jpg
(王禅寺と禅寺丸の原木。
星宿山王禅寺と称し、真言宗豊山派にて、延喜21年(921年)に高野山三世無空上人が開山。関東の高野山と呼ばれていた。周囲には、大きな樹木が茂り、この地を愛した白秋の歌碑がある。前庭には、樹齢450年と伝えられる禅寺丸柿の原木がある。これは、「柿生」という地名・駅名の由来となったと言われている。平成19年(2007年)に国指定の登録記念物になった)

小田急線にて、新宿より30分程のところで、
私は「新百合ヶ丘」ですが、
次の駅が「柿生(かきお)」です。
昔、狐狸庵先生がお住いになっていたとも聞いております。

02f1[1].jpg
(狐狸庵先生jこと遠藤周作氏)

さらに「柿生」の次は「鶴川」で、
白洲正子さんの『武相荘(ぶあいそう)』があります。
周囲は柿ノ木、桜など緑がいっぱいのところです。

main[1].jpg
d0147727_22325550[1].jpg

以前、六月末の渋谷での講座にては、孫の食物アレルギーのことで、
奥様にアドバイスを頂き、ほんとうに有難うございました。
お陰さまで、娘も、又一歩前に踏み出せたようで、
お魚類も、メニューに加わり、
給食も食べられる範囲が少しづつ広がって来ました。

又、近頃購入した蒸気が外に出ない電気釜は、
あのあっさりした「ゆきひかり」が「ささにしき」のような食感に出来上がり、
ご飯中心の食生活ですので、これもうれしいことです。

又、お目にかかる機会がありましたら、
さらなるアドバイスをお願い申し上げます。
末筆ながら、ご健康をお祈り申し上げます。

                  山上敦子

禅寺丸 袋.jpg

若い頃、六甲山に登る山道で見つけた野性の柿。
とにかく道産子にとって、孟宗筍と同じように柿の樹は見たことがない。
夢中で樹によじ登り、ポケット一杯に柿を詰め込み、それを持ち帰って口にほうばった。
そんな野生の味を彷彿とさせてくれる素朴な味わいだった。

いかにも、武相荘の陽だまりの軒端に似合いそうな禅寺丸である。
定めし、彼の白洲夫妻も好んだろう。
そういえば、畏友三輪社長が、「今度はこのテーマで書いてみては」、
と、原稿のネタ本をわんさと持って来てくださった。

それが、白洲正子さんの著作集やDVDだった。
中には「西行」もあって、今の私には到底歯の立つ相手ではなかった。
しかし、「鶴川日記」などのエッセイは、心地よく読むことが出来た。
それこそ、禅寺丸のような渋く深みのある文体で、晩秋の気配がしていた。

こんなことを、書き始めると、取り止めがなく何処までも筆が伸びるので止める。
次郎氏をはじめ、小林秀雄さんや青山さん、延いては細川さんの陶芸話まで出てきそうだ。
とまれ、こういう枯淡の味わいが、国の片隅に追い遣られ、
甘味ばかりを追いかける、当世の舌の衰退を憂う。

禅寺丸が、忘れかけた記憶を呼び起こしてくれるのだろう。
古典の香りとともに。
そんな浪漫的な気持ちにさせるのも、秋の訪れがそこここに来ているせいもあろう。
山上様のご厚情に感謝して、みなで味合いたい今朝の一時だった。

コメント

 素朴なだけの禅寺丸をこんなにも愛でて戴き 本人?に代わって御礼を申し上げます
有難うございます ナチュラルなお皿に盛られてなおいっそう 丸い姿が可愛らしく見えます
 もしまだ残っていましたらごま酢和えもお勧めです 女の方は喜ばれると思います

今朝、ミーテイングでみんなで一緒に食べました。素朴な味に、みな嬉しそうでした。
遠路近所に関わらず、このようなお客様に囲まれてまほろばは幸せです。
何時か武相荘を訪ねた折に、ご連絡したいと思います。
ありがとうございました。

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