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まほろばだより−トピックス−
 
 8月初め、まほろばで開催された「うさと展」。

主催のやんじーこと山口幸雄さん(災害救援ネットワーク北海道代表)を訪ね、アイヌ伝統捕鯨の復活に取り組んでいるエカシ(長老)のひとり、畠山敏さんがご来店された。

あいにく不在だった社長に代わりお話をうかがった。
 
      
                         (編集部 島田浩)


 
 畠山さんは現在、紋別に住み、北海道アイヌ協会紋別支部長をつとめている。
その畠山さんに、最近立て続けに大きな不幸が襲った。
ひとつは昨年10月に、長年連れ添った奥様をガンで亡くされたことだった。
 
 その涙が乾く間もない年明けに、直観力の鋭い大学教授の知人から「避けることのできない災いが2月か3月にあるだろう・・・」と告げられる。

そして、もうひとつの不幸が降りかかった。

 3・11の震災による津波が、岩手に住む二女のご一家を襲ったのだ。
混乱の中すぐに駆けつけ捜索したが、間もなくお孫さん、娘さん、ご主人のご家族全員が、ご遺体で発見された…。

 そう、静かに語り始めた畠山さん。
その深い悲しみはいまだ消え去るべくもないだろうが、自らアイヌとして伝統捕鯨復活にかける思いを聞かせていただいた。

 

 アイヌは伝統的に捕鯨を行ってきており、150年ほど前の記録では、トリカブトを使った漁具で鯨漁を行っていたそうだ。鯨一頭で食料として3つのコタンが潤ったという。
 
 実は、畠山さんは20年ほど前の50代の頃に、一度はアイヌである事をやめようと思った事があるらしい。
今でも変わらぬアイヌに対する差別のせいだ。
ところが、そう心に誓った晩、夢の中に、亡くなった兄が仁王立ちで自分を睨むように現れた。
   思いとどまった畠山さんは、それならアイヌになりきって徹底的に生きてみようと思い直したそうだ。
伝統捕鯨の復活はそんな畠山さんの生き様の中から湧き上がったのだった。

 昨年までは、故郷紋別を離れ、岩手県釜石を拠点に、八戸から犬吠崎方面まで全国各地を渡り歩く漁師としてイルカ漁を行ってきた。

岩手の突きん棒船団のイルカ水揚げを初めて見たときは、「なんてかわいそうなことを…」と思ったそうだが、2時間ほどじっと眺めていると、
「これは、海が与えてくれた大きな資源なのではないか…」という思いに変わったのだという。
冬の間、氷に閉ざされるオホーツクの漁師にとって、それは貴重な収入源となった。

 
 
 畠山さんに会うちょうど10日ほど前、ふと私の故郷、利尻のとある地名が心に浮かんだ。「ポロフンベ」という集落である。アイヌ語に違いないが、いったいどういう意味なのだろう…などと生まれてはじめてその意味に思いを馳せていた。

 畠山さんの口から「フンベ」という言葉が出たときは思わずのけ反った。

「フンベ」とはアイヌ語で鯨だという。
「ポロ」は大きいという意味だそうで、「ポロフンベ」は「大きな鯨」という意味だ。
日本中を鯨の歴史を訪ね歩く畠山さんによると、利尻の沓形に昔、鯨の死骸が流れ着いた記述があり、礼文との間のその海峡には鯨が回遊していたそうだ。まさに「ポロフンベ」は沓形のすぐ隣である。

 まほろばは日本の伝統である捕鯨文化を残そうと捕鯨解禁を訴えているが、私はというと、特に理由も無いが、子供の頃から鯨肉を食べる事ができない。
そんな私が、伝統捕鯨を取材するのはいったいなぜか?と思っていたが、まさか、故郷の土地の因縁だったとは驚きである。

 いったい「フンベ」は、何を伝えようとしているのだろうか…。

 
 捕鯨問題は、食糧ばかりでなく、国益やエネルギー、思想信条までさまざまな思惑が複雑に絡み、簡単に答えを出す事のできない難しい問題である。
 しかし、畠山さんのお話を伺う内に、心の中にひとつの道筋が見えてきたように感じた。
 
 それは、アイヌの方々がもつ「生命観」であった。
ご存知の方も多いかと思うが、アイヌは自然界のあらゆるもの、それこそ鍋や窯までカムイ(神)として大切に敬っている。

 狩猟にしてもけっしてお金儲けのために行うのでなく、自分たちの生命を養うために、必要なだけをとり、カムイの世界へ魂を送り返す儀式を忘れない。

その、心をこそ、いま私たちは取り戻す必要があるのではなかろうか、という事だ。
 社会のあらゆる局面が商業主義にまみれ、「お金」が生活の最重要目的となってしまった現代。
様々な問題の根底に私たちのそんな生き方が隠されているのではないか。

 もちろん漁師の息子として育った私もまた、そのお金で学校を出してもらい、今こうして生活している。
そんな自分自身をも否定する事になるのは承知のうえで、尚思う。

 行き詰ってしまったこの世界を立て直すには、アイヌ等先住民がもつ
「生命観」=すべてのものが、この地球という大地の上で等しく兄弟姉妹として助け合い、美しいハーモニーを奏でながら生きている、かけがえのない仲間だ…という認識を、私たちは再び取り戻す他ないのではないか。


 

 何千年もの間、文明社会は生命を軽視し、争いを繰り返してきた。支配者と支配されるもの、人間と自然、あらゆるものが対立し、バラバラに分離された「歪んだ生命観」は、多くの問題を生み出し、現代の私たちを生存の危機にまで追い込んでしまった。
 


 その文明の負の遺産とも言うべき産業廃棄物処分場が、道東のアイヌが大切にし、野生の鮭も遡上する紋別の清流「藻別川」支流の水源域に建設されようとしている。畠山さんは一人立ち上がり、反対を唱えているのだ。

 すべてがひとつにつながり、絡み合うこの世界では、天に向かって吐いたツバが、まっすぐ自らの顔の上に降りかかってくるように、私たちの出した放射性物質や廃棄物が、再び私たちを苦しめる事になった。

 私たちはアイヌをはじめとする先住民族に、今こそ謙虚に、学ばなければならないだろう。きっと、「フンベ」が伝えたかったのは、そういうことではなかったのか。


ほんとうに大切なものは何か?

生命を大切にする真に豊かな社会は、私たちが"分離"を超えた、その先にある。


そして、「アイヌ(人間)」として再び生きる事を誓った畠山さんは、真のアイヌとして、その精神性を後世に伝え残すため、亡くなられた愛する奥様と娘さんご家族のためにも、伝統捕鯨の再開を目指し、産廃と対峙しているのだと思う。

 
   

中止求め紛争調停申請へ−紋別・処分場−
(2011//3/3 朝日新聞全道版より)

 紋別市のモベツ川支流域での産業廃棄物最終処分場建設をめぐり、遡上するサケの生息環境を破壊する恐れがあるとして、漁業権をもつ地元のアイヌ民族代表が4日、道公害審査会に対し、産廃施設から出る物質の影響調査やサケの生息実態調査の結果が判明するまで工事の中止を求める公害紛争調停を申請することが明らかになった。

 申し立てをするのは北海道アイヌ協会紋別支部の畠山敏支部長。
処分場建設予定地一帯で生態系を守りながら和人とアイヌ民族が共存していく共同体をつくろうと住民や学者が結成した市民団体「モペッ・サンクチュアリ(聖地)・ネットワーク」が全面支援している。

 オホーツク海に注ぐモベツ川支流域の豊丘川の上流地域では、地元業者が2012年春の稼働をめざし。
41fの敷地に産廃施設を建設中だ。
申請代理人の市川守弘弁護士らによると、畠山さんらは現在、道内水面漁業規制による知事の許可を受け、モベツ川で毎年一定量のサケを伝統漁法による儀式をしながら捕獲しているが、「本来は国連でも認められた先住権に含まれる漁業権により自由に捕獲できるもの」という。

 着工前に実施されなかったサケの遡上・産卵などの実態調査、処分場からの流出、浸出する物質の全面的情報公開と影響調査などの必要性を訴える。豊丘川に遡上するサケは「2世代以上にわたり、自然産卵した野生サケの可能性が高い」として、この点も調査を求める。

 同処分場については、地元の住民団体などが反対する中で昨年7月、道が建設許可を出した。
公害審査会によると、先住民族の権利に基づいた調停申請は初めてという。
   
   
   
 


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