まほろばblog

3月 16th, 2012 at 18:06

金子みすゞが関東大震災の翌年に詠んだ詩

カテゴリー:感動する話

矢崎節夫(金子みすゞ記念館館長)

      

(『致知』2011年7月号 特集「試練を越える」より)

金子みすゞは関東大震災の翌年に次のような詩を詠んでいます。

去年のきょう
 ―大震記念日に―

 
 去年のきょうは、いまごろは、
 私は積木をしてました。
 積木の城はがらがらと、
 みるまにくずれて散りました。
 
 去年のきょうの、くれがたは、
 芝生のうえに居りました。
 黒い火事雲こわいけど、
 お母さまお瞳がありました。
 
 去年のきょうが、暮れてから、
 せんのお家は焼けました。
 あの日届いた洋服も、
 積木の城も焼けました。
 
 去年のきょうの、夜更けて、
 火の色映る雲のまに、
 白い月かげみたときも、
 母さま抱いててくれました。
 
 お衣はみんな、あたらしい、お家もとうに、建ったけど、
 去年のきょうの、母さまよ、私はさびしくなりました。

      * *

 みすゞは関東大震災発生時は
 下関にいましたから直接の影響は受けていません。
 
 それでも震災から一年を経て、
 昨年の今日の出来事を深く思うことで、
 被災された人たちの悲しみの一端を
 担おうと考えたのでしょう。
 
 当時お母さんを亡くした子供のことを思って
 一篇の詩を詠んだのです。

 自分が幸せな環境にいても、
 悲しんでいる人のことを自然と思うことができたみすゞ。
 
 二十歳にして、既に自他一如の考えを
 根底に持っていたということは、やはり驚嘆すべきことと思います。

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