小林秀雄の歴史観
3月 15th, 2012 at 16:49占部賢志(福岡県立太宰府高等学校教諭)
(『致知』2004年12月号 特集「徳をつくる」より)
日本の文化伝統を次代を担う
子どもたちにどう伝えていくか。
これが学校教育の中核であるべきだと思っているんです。
私がこういう考えを抱くようになったのも、
小林秀雄さんの教えなのです。
私は学生時代以来、一所懸命読んだのは
小林秀雄さんの本でね、
ある時宮崎の延岡に講演にいらっしゃるというので、
会いに行ったことがあるんです。
その時、私はどうしても質問したいことがあったんです。
![TKY201003170292[1]](https://www.mahoroba-jp.net/newblog/wp-content/uploads/2012/03/TKY2010031702921.jpg)
「歴史を知ることは自分を知ることだ」
と小林さんはよくおっしゃっていたが、
その意味が当時の私にはよく分からなかったんですね。
夜の11時近くなっていたでしょうか。
小林さんが地元の名士と一緒に
ホテルへ戻ってこられたところへ
「質問があります」
と割って入っていったんです。
小林さんは
「君を産んでくれたのは誰か。
君のおっかさんだろう。
おっかさんのいいところも悪いところも
みんな君の中に流れている。
そうすると、おっかさんを大事にすることは、
君自身を大事にすることだ。
君が君自身を大事にすることは、
おっかさんを大事にすることになる。
歴史だって同じじゃないか。
日本の2千年の歴史は君のこの身体に流れている。
君が君自身を大事にすることは、
歴史を大事にすることだ。
だから歴史を知ることは、自己を知ることに繋がるんだ」
ということを噛み砕いてお話しくださった。
考えてみればその通りで、日本の古典には
「鏡もの」というのがありますね。
『大鏡』や『吾妻鏡』。
あれは全部、歴史書です。
日本人は古来、歴史を鏡だと思っていたんですね。
歴史を学べば本当の自分の姿が見えてくるんです。
そういう意味で、生き方の鏡として
歴史を子どもたちに提供していけば、
期せずして徳をつくる教育になるのではないかと思います。