まほろばblog

「想い出をキレイに一生残すために」

5月 23rd, 2013 at 10:36
佐藤 勝人(サトーカメラ専務)  

              『致知』2013年6月号
               特集「一灯照隅」より

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  ただカメラを売るだけでいいのか?
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私は「栃木で一番の店にする」と公言して、
朝から夜まで店に立って働きました。

当時は、とにかく早く回せ、効率よくやれと、
売ることしか頭になかったですね。

「客なんて面倒くさいだけ。さっさと売ってなんぼや」
と号令をかける。

そんなことで、県内に四百軒あったカメラ店の
最下位からスタートして、
三年間必死に働いて栃木一番店になりました。

平成十二年には県内に十店舗を構えるようになったんです。

私生活では高級外車を乗り回し、
毎晩飲み歩き趣味のスノボやゴルフや
サーフィンもやっていました。

これが若い頃に夢に描いた大人の姿なんだなって思っていた。
当時はそれが楽しいんだけど、
でも、どこか楽しくないんですよね。

商品はどんどん売れていく。
でも、ものが売れればそれだけでいいのかと
いう気持ちが芽生えていました。

それが決定的に変わったのは平成十五年、
十三店舗目にあたる、売り場面積二百坪の宇都宮本店が
オープンした時でした。

ちょうどその頃、うちが主催の写真撮影会があって、
私も顔を出したんです。
そこに七十歳代のおばあちゃんが
一眼レフカメラで写真を撮っている。

そのおばあちゃんが俺のところにまっすぐ来て、
「こんにちは、私のこと憶えている?」と言うんです。

しかし、さっぱり分からない。

「私は十年前にあなたに勧められて
  この一眼レフカメラを買ったのよ」

と言われて、まじまじと顔を見ました。

【記者:思い出しましたか?】

いや、そんな昔にカメラを買った
おばあちゃんのことなんて忘れていました。

「六十歳の時に旦那が亡くなって、
 やることもないから毎日パチンコをしてた。
 六十五歳の時、息子に子供が生まれてカメラを買った。

 でも使い方がよく分からないから毎日のようにお店に来て、
 カメラの使い方を教えてもらった」

そこまで聞いて「ああ、あの時の」って思い出しました。
さらにこう話してくれたんです。

「あなたに使い方を教えてもらってから、
 毎日のように楽しく写真を撮って、
 賞もいろいろもらった。

 いま私は七十代だけど、あなたと知り合い、
 カメラを憶えたこの十年間が人生の中で一番幸せだったわ、
 ありがとう」

って。

本当に感動しましたね。
若い頃、人に影響を与えるような人間になりたい、
そんな仕事をしたいと思っていたこともありましたが、
なっていたんです、この仕事を通して。

おばあちゃんのひと言がきっかけで、
これからはきちんとお客さんのことを考えて
カメラを売らなくてはいけないと思うようになりました。

そんな頃ですね、うちの経営方針である
「想い出をキレイに一生残すために」
という言葉が生まれたのは。

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