まほろばblog

「自ら習い、盗まなければ身につかない」

2月 4th, 2012 at 9:43

 
  一龍斎 貞水 (講談師、人間国宝)

      『致知』2009年4月号
          特集「いまをどう生きるのか」より

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最近の若い人はよく、
「教えてくれないからできない」なんて言うけれども、
そういう人間は教えたってダメですよ。

カメラだって、シャッターを押せば
写真を写すことはできる。
けれども、カメラ、写真の神髄は、教えようがない。
つまり、教えてくれないんじゃなくて、
自分が何を受け止め、感じるかでしょう。

だから伝統芸というのは上の人が後に続く人に、
ついてこいというものではない。
後に続く者が先人の芸、技を盗み、
自分の中に取り込んで練り上げてゆく。
それが伝統を守ることに繋がってゆくのだと思います。

僕はたまに

「貞水さんはあまり後輩にものを教えませんね」

って言われるけど、僕らは教えるんじゃなくて
伝える役なんです。
伝えるということは、それを受け取ろう、
自分の身に先人の技を刻み込もうとするから
伝わっていくもの。

教えてくれなきゃできないって言ってる人間には、
教えたってできませんよ。

実は我々も若い頃、自分の技の拙いのは
先輩が教えないからだって
愚痴っていたことがありました。
そうしたら師匠に言われましたよ。

「おまえたちは、日頃いかにも弟子だという顔をして
 俺の身の回りの世話をしているくせに、
 俺が高座に上がっている時、
 それを聴こう、盗もうって気がちっともない。
 ホッとして遊んでる。
 
 俺が高座に上がっている時は、
 どんなに体がきつかろうと、
 お金を払って見に来てくださっている
 お客様のために命懸けでしゃべってるんだ。
 
 その一番肝心な時に、聴いて自分から習おう、
 盗もうって気がないからうまくならないんだ」

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